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第8話 早すぎるよ、龍ヶ崎さん

「お腹すいた」 と、龍ヶ崎がやっとしゃべった。 「「はあ?」」 と、修ちゃんと鈎沼くん。 「え?」 と、高槻くん。 「龍ヶ崎?」 と、オレは首をかしげた。 龍ヶ崎の脈略のない発言。 意味がわからない、と思ったけど。 「少し早いけど、ご飯食べに行こうか」 と、龍ヶ崎。 顎から離れた龍ヶ崎の指が唇をなぞっていき、 時間だよ、と耳元でささやかれた。  さぁーと、一気に体温が下がった気がした。 自分が思っていたより『金曜日』は早い時間から始まるようだ。 少しでも時間を引っ張りたい。 だって、まだ16時半にもなってないんだから。 オレが風紀委員室に来たのが16時前。 30分も経っていない。 ふだんは早くても、18時過ぎまでいるのに。 今日は19時過ぎまで残る気でいた。 なんだかんだ理由をつけて、遅くに龍ヶ崎の部屋に行くつもりだった。 当初の予定より、かなり早い。 早すぎる。 「龍ちゃん、退散早くねぇ? 昼抜きでもないくせにぃ」 と、修ちゃん。 「修先輩っ! これ以上機嫌そこわないでくださいよぉ」 と、鈎沼くん。 修ちゃんと違って、空気がよめる鈎沼くんだ。 「……仕事が終わってない」 と、オレ。 もっとよい、言い訳がみつからない。 お腹がすいていない。 夕食は他の人と一緒き行く約束をしている。 とか、言っても通じないはず。 「明日にすればいいよ」 と、龍ヶ崎。 明日なんて、絶対にここには来れないのに。 「書類がたまる」 と、オレ。 「手伝うよ」 「じゃあお言葉にあまえます」  と、答えて自分の席に座った。 龍ヶ崎は自分の机には行かず、立ったまま、見下ろしてきた。 せかすように、オレのそばから離れない。 オレは未整理の書類を未処理ファイルに閉じた。 「終わり?」 と、龍ヶ崎。 「あぁ」 と、オレが答えたら、 龍ヶ崎が未処理ファイルを取りあげた。 それをカギつき整理棚に持っていき、中にしまってカギをかけた。 「行くよ」 と、龍ヶ崎。 「洗い物、するから」 と、オレ。

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