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第9話 エロ魔神

「洗い物?」 と、龍ヶ崎。 オレは立ち上がって、自分が飲んだカップを持った。 「俺のも」 と、委員長がカップを渡してきた。 二人分のカップ洗いなんてすぐに終わってしまった。 時間かせぎにもならない。 みんなのカップを集めるたりも出来ない。 ふだんやらないことを今日に限ってやったり出来ない。 そんなことをしたら、修ちゃんや鈎沼に変な詮索をされてしまうからだ。 「シンクでもみがいてるんだと思った」 と、自分のマグカップを持った龍ヶ崎が給湯室に入ってきた。 そのてもあったんだねー。 近づいてきた龍ヶ崎に手を差し出したら、 「はぁ?」 と、思わず声が出た。 だって、手をにぎられたからだ。 眉間にシワがよってしまったのを自覚した。 「カップ」 と、オレ。 「自分で洗う」 と、龍ヶ崎。 でも、手はつかまれたまま。 シンク前に立つオレの後ろに、龍ヶ崎が立った。 オレに覆いかぶさる格好で、 「ちょっ…」 オレの手を離したら、龍ヶ崎がしれっとカップを洗いだした。 「龍ヶ崎っ、誰かきたら」 「きたら?」 「……変に思われる」 「あんたと修が抱きあってても、誰も何も言わないし、このくらい何も思われないよ」 「修ちゃんとおまえじゃ違うってっ」 龍ヶ崎が洗い終わったカップを水切りカゴにおいた。 手を洗ったあと、蛇口をとめ、ぬれた手で肩を抱きよせてきた。 「どう違うの?」 と、龍ヶ崎が耳朶をはんでくる。 くすぐったくて、首をふるけど龍ヶ崎の唇は離れてくれない。 どうって……。 修ちゃんとの違い、ってなんだろう? うっとうしくて、暑苦しいけど、修ちゃんにさわられても、嫌じゃない。 ペットをかわいがる感じに似ていて、あまやかされているみたいだし。 一番の違いは、性的なものを感じないから。 ……龍ヶ崎は、なんていうか、エロい。 目線ひとつとっても、なんか、いやらしいんだよ。 さわりかたも、ちょっと性的なものを連想させるし。 「いやらしくないとこ」 と、オレ。 「あいつはエロエロ魔神だよ」 「オレにとっては、おまえのほうがエロ魔神だよ」 やっと龍ヶ崎の口が、オレの耳から離れ、 龍ヶ崎の大きな手が、オレの両頬をはさんだ。 顔をあげさせられ、視線があう。 「じゃあエロ魔神とエロいことしようか」 と、龍ヶ崎が喉奥で笑った。

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