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第10話 はい、夕飯抜き確定
給湯室から出たら、龍ヶ崎に拉致されるように風紀委員室を退散した。
けっきょく、寮の食堂には行かずに、龍ヶ崎の部屋に直行した。
「夕飯は?」
と、オレ。
「あとで」
と、龍ヶ崎。
「あとでって。……絶体に、食べれないわ」
「だって夕食にはまだ早いでしょ」
と、しれっと龍ヶ崎。
お腹がすいたっと言って、風紀委員室から退室したのに。
「次の放課後はここに直行して」
と、龍ヶ崎。
「仕事がたまるって」
「今まではあんたがいなくてもまわせた。お茶くみしてぼんやりされてても、めざわりだから、誰でも出来る仕事を割りふっただけ」
単純簡単作業なのはわかるけど、ひどい言われようだ。
「おまえは委員会、さぼれないだろうが」
と、オレ。
「早くは帰ってこれるよ」
「一人では部屋に入れない」
「ここの予備キー渡してるでしょ。それで入って」
「……なくした」
「なくした? それが本当なら悪用されないように、カードを止めなきゃなんないね。桜井が僕のカードを、いつ、どこでなくしたか、寮監に連絡して停止手続きが必要になるし。本当になくしたの? 捨てたんじゃなくて?」
と、正論を長文でつめよってきた龍ヶ崎。
オレの嘘なんかお見通しで。
「……あるよ。捨ててない」
と、観念したオレ。
「僕が来るまで、それを使ってこの部屋で待ってて」
「待つって。……何してたらいいんだよ?」
夕食作って振る舞うなんて、出来んし。
男子厨房に入らず。
そんな環境で育ってきたから、料理はしたことがない。
家庭科の調理実習で、お米を炊いたり、したごしらえしたものを焼くくらい。
調理より洗い物担当のオレ。
「寝てれば?」
と、龍ヶ崎。
「はい?」
「いつも寝こけているから、慣れっこでしょうが」
好きで寝てるわけじゃない。
おまえに抱き潰されてんだよ。
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