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第16話

「やっ…ムリ」 と、オレ。 「いつもしてることだよ?」 「してないよっ」 オレは今、ベッドの上でひっくり返ったカエルのような格好を、龍ヶ崎に強要されていた。 床から立たされて、ベッドに仰向けに寝かされ、足を開くように、龍ヶ崎が言ったのだ。 オレが少し足を開くと、両膝を立てるように言われ、したがったら、もっと膝を開くように言ってきたのがついさっきだ。 「足、開かないと見えない」 と、龍ヶ崎。 「み、見なくていい」 「手探りでケツの穴、ほぐすの?」 と、失笑した龍ヶ崎。 前戯をきちんとしてるようなセリフだけど、けっこうローションまかせのくせに。 挿入が主で、その気にさせるムードもなし。 終わった後のフォローもなし。            なのに、取っ替え引っ替えセックスの相手はたくさんいる。 どこが魅力的なのか、わからないけど。 性格はまず、ありえない。 イケメン? 成績優秀? 絶倫? まぁ、この三つがあれば、やりたい放題だけど。 それに、風紀副委員長という肩書きと家柄というオプションもついてくる。 もしかしたら、オモチャのオレにはしない優しさや思いやりが、他の人とのエッチの時にはあるのかもしれない。 普段は無表情の顔(一般には涼しげな顔と言われている)が、少し苦し気に眉をよせたりすると、オレでも、やっぱクる時がある。 熱っぽくて低い甘い声は、かなりずるいし。 たま~に見せる子供みたいな無邪気な笑顔は、心臓に悪いし。 「ローションかければ、入るよ」 と、オレ。 「僕のがそんなにすんなり入るほど、ゆるいの?」 「そんなん知るか…」 「されるのが嫌なら、自分でしてよ」 「え? やっ……」 膝をガバっと開かされた。 「ちょ…ムリぃ…」 龍ヶ崎の手を外そうとしたら、オレの手を逆につかまれ、腰の下に枕を入れられた。 腰つーか、アソコをつきだした格好。 AV女優がテレビの向こうの視聴者に局部を披露して興奮させる、いわゆるM字開脚というものだ。 いつもより、早い時間。 梅雨時なのに、今日は晴れていた。 窓のカーテンは開けられたままで。 電気をつけなくても十分に明るい部屋だ。 つかまれた手にローションをかけてきた。 「僕にされるのは嫌なんでしょ。自分で準備してよ」 と、龍ヶ崎。 「…こ、の格好、やだぁ……」 「あぁあ、ローション垂れちゃったね。自分で出来ないんだったら、僕がするけどいいの?」 自分でするのも嫌。 龍ヶ崎にされるのも嫌。

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