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第42話 1作に1度は野間っち登場
梅雨時特有の湿度の高さと夏のような気温の高さ。
週始めから不快指数がマックスの気候だ。
登校時にはそこそこの雨が降っていて、傘をさしていても肩口が濡れるほどだった。
始業前の今は雨足が弱くなっていて、オレは外をうらめしく見ていた。
もう少し遅く寮を出ていれば、ぬかるんだ道を歩かなくてもよかったのに。
「顔色、悪いぞ」
と、前の席に座る野間明史 が振り返って、オレの顔をさわってきた。
じめじめ梅雨なのに、いつも晴天のようなさわやかスポーツマンの野間。
日焼けして赤茶けた短髪が、日焼けした褐色の肌色とマッチしたマッチョ。
髪を伸ばしたら、サーファーみたいに見えるはずなのに、チャラく見られない。
育ちがよいからか?
なんか、ずるい。
ふつうにしてても、チャラく見られるオレ。
野間といったい、何が違うのか?
肌色は日焼けしても、すぐに元に戻るから褐色にならないし。
髪か?
髪を短くすれば、さわやかイケメンになれるのか?
そういえば、バレー部の時は短髪でチャラ男なんて、言われてなかったし。
髪、短くしようかなぁ。
「あ、ほんとだ。目がうるうるしてるよ」
と、クラス委員の沢木護 が、机の横に立っていた。
護が座っているオレの顔を覗きこんできた。
ついでに、野間の手をさりげなく、オレの顔から払いのけた。
護は初等部からずっと同じクラスで友達だ。
少しくせのある黒髪に焦げ茶フレームのメガネで一重の大きな黒目。
中等部からメガネをかけはじめた。
身長はオレの方が高かったのに、高等部になってから抜かされた。
オレのまわりって、高身長が多くて嫌だわ。
オレももうちょい背を伸ばしたい。
「ちょっとかぜぎみかな」
と、オレ。
「声がれ、すごいよ」
と、護。
「薬飲んだら治るから、大丈夫」
と、オレ。
「悠人の大丈夫は信用出来きないよ。体弱いのにムリばっかするんだから」
と、護。
いつまでも、オレの小さい頃のイメージがついてまわるみたいで、困るくらい心配性だ。
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