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第51話 保健室
護に連れられてたどり着いた保健室。
薄ピンク色のパーティションでしきられた奥には、薄ピンク色ののカーテンで囲まれた白いベッドがあった。
一番手前のベッドに横になったオレ。
そばには無言の護。
いつもはうるさいほど世話焼きなのに、ベッドわきに突っ立ったままだ。
オレはベッドに仰向けで寝ているので、天井をぼんやりと見ているしかなかった。
保健室の大川先生がそばにやってきて、体温計を渡された。
しっかりとしめていたネクタイをゆるめて。
シャツの全部のボタンをきっちりととめていたオレは、ボタンを上から3つ外し、体温計を脇にはさんだ。
大川先生は中年の先生だ。
たぶん40代だろうに、なぜかおじいちゃん臭がただよっている。
見た目はそこそこのナイスミドルなんだけど、かもしだす雰囲気が好好爺(こうこうや)っぽい。
電子音がなり、体温計を取り出し、表示を見れば38.4℃。
微熱のレベルじゃない。
「寮に戻ったほうがいいね、桜井くん。午後に往診してもらうように久保田医院には連絡しとくから」
と、大川先生。
久保田医院は寮にある内科の診療所だ。
診察時間は平日の13時から20時まで。
土日祝日は休診日。
学会等の都合でそれ以外にも休診日あり。
久保田先生と伊藤先生と橋本先生の3人の医師が交代でで診察していた。
「今から往診頼めませんか」
と、護。
「緊急性ないし、午後でいいよね?」
と、オレに同意を求めてくる大川先生。
「でも」
「しんどそうだから、ここでしばらく休んでから寮に戻ればいいからね~」
と、護の言葉をさえぎった大川先生。
「沢木くんも早く教室に戻らないと。2限目、遅刻じゃなくて欠席になっちゃうよ」
と、大川先生。
大川先生は護の手をとってベッドから引き離し、護を引っ張っていってしまった。
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