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第55話 供人がイヤなんじゃない。友情が偽りだったのが怖いんだ。
「仕事というより、使命なんじゃないの? 業務だけで事務的に、きみに寄り添っていたようには見えなかったな。沢木くんは桜井くんのこと、本当に大切に大事にしてるのが伝わってきたから」
と、先生。
オレが『あの人』の感傷に浸っていたら、護の話しの途中だったけ。
「……護はいいやつだよ。オレと違ってなんでも出来て。でも…………偽物の友達だった」
「偽物って。じゃあ、野間くんは本物なの?」
「先生、イヤなこと聞くね。……そんなこと言われると、みんな偽物みたいじゃないの」
オレの友達は自分で構築したのではなく、すべて事前に家が用意した者に思えてくる。
「今頃、自分の供人に気づくなんて。桜井くんはのんびりやさんだね。ほんとに大事に育てられたおぼっちゃまだ。桜井家がきみをのばらしにするわけがないのに」
「っ……」
供人は家から派遣せれている従者のこと。
中等部になったら全寮制の寮に入り、自分で洗濯掃除などの家事をしなくてはならなくなる。
しょせん坊っちゃん学校なので、そんなことをしたことない生徒がほとんどだ。
生活全般の手助けをするために、使用人を入学させ、子供の世話をさせる家があるのだ。
どうしても家事などがこなせない場合は、寮の部屋に家政婦が通ってくることも、学園から許可がおりれば可能だった。
沢木護は家がオレのために用意した者というわけだ。
中等部からじゃなくて、初等部からという用意周到に準備された供人。
オレはそれをずっと家からも護からも伏せられていた。
「この学園では、供人がつくのなんて当たり前だよ。それを知らされているかいないかの違いでしょうが」
「でもっ……」
「桜井くんが幼稚すぎて、知らせるタイミングがなかったんじゃないの? それにきちんと彼が家が用意した供人か、確認しないと」
保健室の先生って、
やさしく看病してくる。
やさしい言葉をくれる。
生徒からは慕われる。
そういうのが、保健室の先生じゃないの?
大川先生もそういう先生だと思ってたけど、違った。
内面の傷をぐいぐいとえぐってくるタイプなんだ。
おじいちゃんみたい。
なんて、思ってた印象とは中身はかけ離れていた。
「憶測だけで判断しないで。……本当は確認するのが、怖いの?」
と、先生。
「……すみません。寝ます」
と、オレは言って目を閉じた。
今は考えたくない。
外界を遮断したい。
学園には供人を堂々とつれている生徒がかなりいる。
表立って引き連れている人もいるが、影のように控えさせている人もいた。
護が供人の場合、堂々と連れだってそばにおいているパターンに当てはまるはず。
護が供人じゃないとは思えないが、もしも違っていたらどんなによいか。
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