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第56話 眠り姫といばら姫って同じだったけ?

顔をさわられて覚醒した。 …………先生? 髪をゆっくりなでられ、手ぐしですかれた。 よく知るしぐさが、まどろみを誘う。 起こしにきたのなら、声をかけるはず。 ただの様子みなら、すぐ立ち去るはずだ。 入眠をうながすように動く手に、再度寝入そうになった。 髪から手が離れ、おでこや頬をやさしくふれていく冷たい指。 唇を指先がなぞっていった。 唇に押しあてられたあたたかい皮膚の感触。 下唇を食まれ、吸われて。 オレはパチリと目を開けた。 龍ヶ崎がオレにキスをしていた。 首を後ろに引き、龍ヶ崎の顔から離れた。 「白雪姫みたいだね」 と、似合わないことを言った龍ヶ崎。 驚いて反応が遅れたら、 「7人の小人はいないの?」 と、龍ヶ崎。  オレの枕元の床に膝をついた格好の龍ヶ崎がいた。 『白雪姫』は毒リンゴを食べて死んじゃってて、小人たちが森の中で悲しんでたら、たまたま通りかかった王子さまがキスして、生き返った。 て、いうのじゃん。 王子さまがキスして目を覚ますほうだったら『眠り姫』のほうじゃねぇの? 「はいはい、童話ごっこはおしまい」 と、オレは上体を起こした。 「いま何時?」 と、オレ。 「昼休み。お腹空いてる?」 「……飲み物欲しい。ご飯はいらない」 龍ヶ崎にオレの頬を両手のひらでつつまれた。 「顔色、よくなったね」 と、龍ヶ崎。 教室の斜め対角に位置するオレたちの机の位置。 あの距離で、オレの顔は見れても、顔色までは判別出来ないはず。 「おまえのせいで、まじで出席日数足りなくなるわ」 「悠人の言う通りにしたのに。体力ないのをぼくのせいにしないで」 龍ヶ崎の手をつかんで、オレの顔からはずし、 「た、体力の問題じゃないだろっ。おまえの精力が底なっ……」 わめいてる途中で、龍ヶ崎の指がオレの口に人差し指を立ててふれてきた。 「隣いるから」 と、龍ヶ崎。 「うそ……」 「ほんと。ほら、飲み物」 と、龍ヶ崎はオレの唇から指を離した。 そして龍ヶ崎に渡された500ミリリットルサイズのペットボトル。

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