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第62話 監視の中の自由は不愉快だ

「……泣かないで」 と、龍ヶ崎の眉尻がさがった。 「目ぇ、開いてんの? 泣いてなんかないだろうが」 「だって、泣き顔だよ」 「はあ?」 なに、言ってんの? 涙なんか出てないのに。 「笑わないから」 と、めずらしく歯切れの悪い龍ヶ崎。 「…………いつも笑ってないよ」 「笑顔っていうより、へらへらしてる」 「……なにそれ」 龍ヶ崎の前では、オレはあんまり笑わないと思う。 笑顔の安売りなんかいらないし。 「教室で笑ってなかったよ。供人がいるのがショックだった? それとも、沢木が家の指示で動いていてのが悔しかった? 裏切られたみたいで悲しかった?」 と、龍ヶ崎。 たたみかける質問の連打。 どれもオレの心情を言い当てられていて。 「…………オレってそんなにわかりやすい?」 真っ直ぐにみつめてくるきれいな目から、下を向いて視線をそらした。 「供人、ぼくがなってあげようか?」 ぱっと顔をあげたら、龍ヶ崎の口角があがった笑顔があった。 お得意の人を小バカにしたような顔だ。 「他家の人間がなってどうすんの? まず、なれないし」 と、ため息をついたオレ。 「近況報告すればいいんでしょ? 今日の悠人はかわいいく泣きながらぼくにしがみついて、イきました。何度咥えても、フェラはうまくなりません。て、桜井さんに伝えればいいんでしょ」 ……供人の報告にそんなもんあるか。 成績や生活態度、交友関係と交遊関係とかだ。 「そんな報告受けたら、父さん倒れるよ」 と、オレ。 すぐに龍ヶ崎が鼻先で笑った。 「まさか。笑顔でそうか、て言うんじゃないの? 桜井さんここ(学園)出身でしょ? ここに入れた時点で、男の性的な相手するのはわかりきっていると思うよ? ましてや悠人は小柄できゃしゃで少女みたいな顔をしていたのに。飢えたオオカミの群れの中に、弱くて旨そうな子羊を放りこんだ張本人なんだから。どうなるかなんて、誰だってかんたんに想像出来るよ」 親のこと、ひどい言われ方をした。 父さんの心情も思惑もわからないけど、 でも、正論だ。 ここにいたら恋愛対象が男になるのは必然的だ。 オレが先輩に夢中になっていたことも。 ころころと恋人が変わっていたことも。 龍ヶ崎とセフレになっていることも。 すべてを父さんは把握しているはずだ。 それでも注意や忠告を受けていない。 オレは信頼されているのか。 それとも無関心なのか。 家からば監視されているけど、ここの中では干渉もされずに、自由にさせてもらっているのは確かだった。

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