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第64話 オレの初恋の人は瑞希さん

オレの手首をつかんでいた龍ヶ崎手が放され、手をつないできた。 「歩ける?」 と、龍ヶ崎 オレがうなづくと、龍ヶ崎が歩きだした。 引っ張られるかたちでついていく。 「オレのこと調べたの?」 中等部3年の2学期から転校してきた龍ヶ崎が、オレの中等部1年の時のことを知っていた。 「悠人と神田瑞希(かんだみずき)のことなんて、調べなくても、ちょっと聞けばホイホイ話してくれたよ」 「え?」 「高等部3年の美人な元生徒会副会長と、入学したての中等部1年の桜井の箱入り息子のスキャンダル。同級生は二人のことをいつも目の当たりにしてせいか、みんなよく覚えてたよ」 「…………うそ」 思わず立ち止まったオレの手をぐいっと、龍ヶ崎に引かれた。 そして、歩調をゆるめて歩き出した。 手をつながれたままだから、おのずとオレも歩くしかない。 「まぁ過去のことだし。寛大なぼくは気にしないから。友達が嫌なら恋人になってあげるよ」 ……それ、蒸し返す? とりあえず、友達と恋人を両天秤にかけるの、やめて欲しいよ。 オレは別に新しい友達が欲しいわけじゃない。 護が普通の友達じゃなかったことが、ショックだっただけ。 「タイプじゃない」 と、オレ。 「体の相性はいいのに」 「……よくない」 「よがりまくってるのに?」 「よがってないよっ!」 「客観的に判断するのには、動画が必要だね」 まじでやりそうで、怖いわー。 「……やめろよ。龍ヶ崎の場合、冗談に聞こえないから。タチ同士なんだから、根本的に相性はよくないの」 龍ヶ崎がかすかに眉間をよせ、 「まだタチだと思ってんの?」 と、少し不機嫌そうに言った。 「もちろん」 と、オレ。 「……まだ抱けると思ってるんだ?」 オレが力強くうなずいたら、 「ふ~ん。だったら、ぼくを抱いてみる?」 「はい?」 前にもオレに抱かれようとしたけど。 あれは、ただの嫌がらせだと思った。 「……抱かれたいの?」 恐る恐るのオレの問いに、 すぐに破顔した龍ヶ崎。 また、からかわれた。

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