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第65話  バディ、ステディ、フィアンセ。並べるとまるで呪文だ

「悠人が誰を抱こうとかまわないけど、悠人を抱くのは、ぼくだけだよ」 と、クスクス笑いながらの龍ヶ崎。 半分だけ独占欲丸出しのセリフ。 まるで熱烈な告白みたいだ。 でも、 オレは龍ヶ崎の何でも出来ちゃうオモチャにすぎない。 卑猥な写真でおどされた。 対等な関係じゃない。 「浮気容認なんて、ずいぶんと心の広い恋人だな」 さらりと、受けてたったオレに、 「縛りすぎると逃げられちゃうでしょ、悠人は。ほどよい距離感がお好みみたいだし」 と、笑顔を消した冷えた目の龍ヶ崎。 「オレとおまえの距離感っていうのに、開きがありすぎ」 「お互いに歩み寄ればよいバディになれるよ」 と、龍ヶ崎。 バディってなに? 親友? 相棒? 友達にもなっていないのに、そんなのは無理っていうもんだ。 「バディもステディもなし」 と、オレ。 「確約が欲しいんだったら、フィアンセでもいいよ?」 と、会話が成立しない龍ヶ崎。 「オレ、男~」 「性別は関係ないよ」 「…………頭のMRIとってもらえ。いや、心療内科行きなさい」 「カウンセリングが必要なのは、悠人の方だよ」 「なんの?」 「新しい恋が出来るように」 「大きなお世話」 何も知らないくせに。 4年も経ったのに、引きずる自分が心底嫌だけど。 いまも、あの人以上に自分を縛る人はいない。 オレのタイプは、小さくてかわいくて健気でひたむきで、できれば手料理をふるまってくれる子。 それは、あの人に捨てられてからの理想像。 あの人は、傲慢で高慢で高飛車でわがままな女王様気質。 あの人に、ペット扱いされたのはオレ。 たぐいまれな美貌で人々を魅了しているのに、一番大切にしている人には想いを告げられない臆病者だった。 散り急ぐ桜の木の下で出会って、暑さに狂わせられたように抱きあって、大雪の中で捨てられた。 人を好きになることのときめきも楽しさも喜びも。 せつなさも醜さもつらさも痛みも苦しさも悲しさも。 いろんな感情を、良さも悪さも教えてもらった。 初恋はみのらない。 叶わないもの。 世間一般のセオリー通りに、あっけなく終わった初めての真剣な恋。 もう誰かに振り回されのは、 こりごりだ。 寮内の久保田医院についたら、龍ヶ崎はあっさりと学園に戻っていった。 診断結果は、過労による発熱だろう、とのこと。 抗生剤入りの点滴をうって、抗生剤と解熱剤を処方してもらった。 点滴終了後に、部屋まで送るという看護師さんを丁重に断り、一人で帰ってきた。

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