5 / 6

第5話 幼なじみ 再会

元々慎之介とは ”大宮町子供園”って児童養護施設で 一緒だった。 と、言っても一緒に生活してたのは僅か2年足らず だったから慎之介が俺を覚えていたか? は、 定かではない。   あれは忘れもしない3年前のこと。 街ん中ぶらぶらしてたら、 南高の奴らとバッタリ出くわしちまって。 連中の南高と当時俺が通ってた学校はいっつも下らない言い争い ばっかしてる、 いわゆる犬猿の仲なんだけど。 その時は俺1人に向こう5人で。 圧倒的多勢に無勢。 もち向こうはラッキーと思ったみたい、 予想通り難癖つけてきて。 俺はあっとゆー間に路地裏に連れ込まれて、 ボコられてたワケ。 そこに偶然通り掛かったのが、柊 慎之介! 『……そこ、通らせてくんない?』 薄暗い路地に入ってきた黒髪の青年は、 リンチ現場に出くわしたとは思えない 淡々とした口調で言った。 『はぁっ? ―― オマエその制服、東高か…… 悪いこたぁ言わねぇ、お坊ちゃまは早く帰って ママのおっぱいしゃぶっておねんねしな』 『そーそー、早く帰らねーとお前もまとめて ヤッちゃうよー』 『あ、帰る前に迷惑料払ってってね~。払わないと そのおキレーなツラに2度と消えないアザ 出来ちゃうよ。コイツみたいに』 南高の奴らは散々ボコられて壁際に倒れ込んでた 俺を指差しながら、東高の奴をカツアゲしようと その周りを囲む。 南高のヤツらに囲まれたそいつは微動だにしない。 つーかまぁ、東高の奴なんてケンカなんかした事も なさそうだし、ビビって動けねーんだと思った。 ところがその直後 ――! あ~、めっちゃカッコよかったな~。 なんか時代劇とか見てるみてーだった。 だって、ずーっと前にお祖母ちゃんと一緒に行った 京都の映画村で見た、時代劇の模擬撮影と全く おんなじだったんだ。 東高の青年は持ってた細長い袋からスッと 竹刀を取り出すと、ビシ!ビシ!ビシ! っと流れるような動きで南高の3人を叩き伏せた。 胴を打たれて呻きながらしゃがみ込む奴らに 追い討ちをかけるように蹴りまで食らわせる。 ケンカ慣れしてねーどころか、 ゴロツキもビビる鬼畜っぷり! 『この自慢の美肌に2度と消えないアザ、 こさえるんじゃなかったのー?』 竹刀の切っ先を三人組のリーダーっぽい奴の おでこにガッと当てて、その人は言った。 『ツルんでねぇとケンカもできねぇような奴らが、 格上に向かって歯向かうんじゃねぇよ』   (う”……う、わぉ!!) 俺はこの瞬間、この人に惚れた。 その時3人組の1人がはっと気付いたように 言った。 『あ、コ、コイツ、東高の柊……!  ヤベ、逃げろっ!』 『ゲっ! 柊? すっ、すいませんでした! 失礼致します』 腹をさすりながらヨロヨロと立ち上がると、 ペコペコ頭を下げながら散って行く南高の奴ら。 東高の柊……聞いたことある。 毎年剣道の全国選手権の常連になっている程の凄腕 大学生剣士らしいんだけど。 知らずにケンカふっかけた南高のバカ共が メッタメタにのされて、今じゃ南北のグループを 裏で仕切ってるとか。 もちその話しの信ぴょう性はかなり怪しいもん だけど。 実際俺のがっこでは、滅多に他人の事なんか 話題にしたりしねぇから、 ちょっと大げさに言われてんのかと思ってた。 少なくとも俺の知ってたグループでは 話に聞いたこともなかったし。 ──けど。 この人が、柊 慎之介……。

ともだちにシェアしよう!