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第4話

今の自分に客なんて……クラウスの言う客人とは、いったい何者だろうか。 サシャは嫌な予感がした。 だが、寝室を出て階下に降りたサシャは客人を見て驚いた。 「!?……カート!」 「サシャ!!」 客人とは、従兄弟だった。 数日前なのか、数週間前なのか。 この従兄弟に会うためにサシャはこの地へ来た。 そして、吸血鬼の晩餐会で魔術士に見初められ、囚われたのだ。 北の森に帰る道中に行方知れずになった従兄弟をカートは探し続けていた。 捜索の末、ようやっと魔術士の屋敷へたどり着いたのだ。 「サシャを出せ!」と吼えるように乗り込んできたカートに、魔術士は優然と微笑み、サシャと引き合わせたのだった。 「やっぱり! こんなところにいたんだな。ずっと探していたんだぞ。さあ、帰……!?」 サシャが自分を迎えに来た従兄弟の懐かしい顔に、希望を見いだしたとき……カートの表情が凍りついた。 「カート?」 サシャは従兄弟に手を伸ばしたが、カートはその手を振り払い、後ろへ下がった。 「……何なんだ? お前は。」 険しい表情でサシャを見る。 「カー……」 「その匂い、サシャじゃない。人間だな」 狼人間の嗅覚は発達している。カートは外見ではなく、匂いでサシャを確認したのだ。 「だから言ったでしょう。これは似せて創った愛人だと」 「な、なにを言って……」 「私が王国一の魔術士だからといって、満月の夜の狼人間を捕らえておくなんて不可能です。同じ狼の血族の貴方なら、よくお分りのはず」 クラウスの言葉にカートは不快そうに眉を顰めた。 確かに従兄弟は美しい。 一族の中でも秀でている。月と同じ金色の瞳をした、強く誇り高い、愛しい黒狼だ。 その従兄弟に似せて愛玩人形を創るなど、悪趣味極まりない。 だが、コレがサシャでは無いなら、もう用は無かった。 「邪魔をした」 カートはもうサシャに見向きもせず、背を向けて屋敷を出ていく。 「待って!」 サシャは必死で追い縋り、カートの上着の裾を掴んだ。 「触れるな! 穢らわしい!!」 カートはサシャの手を振り払い、低く唸って威嚇した。 「……カート……」 「人間の愛玩人形風情が私の名を呼ぶな」 冷たい視線を寄越して、そのまま立ち去っていった。

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