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第7話

魔術師は城へ向かう馬車の中で、残してきたサシャを想った。 サシャの血を入れ替え、狼の血族から人間へと変化させることに成功した。 血族との繋がりも断ち切った。 呪いで屋敷に閉じ込め、誰にも見せずに、夜でも昼でも愛し続けた。 ───愛してほしいわけじゃない。 サシャにも伝えたが、それは魔術師の本心だった。 サシャを完璧に手に入れたいのだ。例え愛されなくとも、自分の手の中に閉じ込めてしまえれば、それでいい。 サシャを作り変え、行き場を無くして。完璧に囲ってしまえば。 だが、ある時。魔術師は気付いた。 ある日、黒い長衣を着て窓辺のソファに気怠げに座るサシャは、窓の外をぼんやりと見ていた。 だが一瞬、その金色の瞳に鋭い獣の輝きが戻った。 窓の外を見ると、野ウサギが走り去っていくのが見えた。 狼だった頃のサシャは狩りが好きで、満月の夜には本能のままに森を駆け抜け、己の牙で獲物を味わった。 一瞬だが捕食者の輝きが、サシャの瞳に戻ったのだ。 その日は、満月だった。 サシャは狼に変わることはない。 それでも月が満ちるのと共に、狼としての誇りや本能を取り戻すのだ。 新月の夜には諦めたように素直に体を開き、甘く鳴くが、満月の夜は徹底的にクラウスを嫌悪し拒んだ。 ───気高い魂までは、変えることができない。 その事実は魔術師の歪んだ愛を更に歪ませた。 ふと、美しい唇に微笑を浮かべて、クラウスは悶え苦しんでいるだろうサシャを思い浮かべた。 「あ、あ、ぃやぁあああ!!……アッ! いやだぁあ!!」 取り残されたサシャは苦し気に床をのたうち回っていた。 尻の穴の奥深くに潜り込んだ蟲が、ウネウネと蠢めき、内部からサシャを責めているのだ。 「あ、あ、うぅううあ!……や、めろぉ……嫌だ! いやっ!……ヒィイッ」 這うようにして、扉に手を伸ばし、ガリっと引っ掻いたが…… 「あ! いやぁああ────ッッ!!」 尿道奥深くの蟲も蠢きはじめた。 ガクッ! ガクッ! と、サシャの痩身が大きく痙攣する。 「ひ! やぁ……クラウス……クラウスッ!……あ、あぁああ……!」 おぞましい蟲どもに責め苛まれて身悶えるサシャは、無意識に魔術師の名を呼び、救いを求めた。 サシャは泣いて震え、身悶え、甘い拷問のような蟲達の責め苦に一晩中、鳴き続けた。

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