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残酷で甘やかな痛み

「さて、待たせたね。犬塚」 ようやく竜蛇が仕事を終えて、犬塚の方を見た。 犬塚は放置されていただけだが、すっかり疲弊していた。 憎く、恐ろしい男の側で、何もされず放置されたままでいることが、こんなにも精神をすり減らすとは知らなかった。 竜蛇はそっと犬塚を抱き上げ、ベッドへと運んだ。 肌触りの良い濃紺のシーツの上に降ろされて、犬塚の表情が強張る。 ───今から、犯されるのだろうか…… 嫌で嫌でたまらない。 だが、精神的に疲弊しきっており、両肩と両脚の関節は外されたままだ。 抵抗する術が無かった。 犬塚が死を覚悟したような表情をしたのを見ながら、竜蛇は壁に手を伸ばした。 そっと掌を触れさせると、白い壁に50センチ平方の切れ目が表れて、スッと引き出しのように前に出た。 竜蛇は中から小箱を取り出す。赤黒いアンティーク調の美しい小箱だった。 牡丹と龍の絵が彫られている。 「犬塚。俺はこんなことしたくはないんだよ?」 竜蛇は優しい声音で犬塚に話しかける。 「だが、愛しいお前の望みならば仕方がない」 「な、にを、言って……」 カラカラに乾いた喉から、掠れた声で聞き返した。 竜蛇が小箱を開けると、中には天鵞絨の布に包まれた何かが納められていた。 犬塚は横目にソレを確認する。 そして天鵞絨の布を開くと、細く鋭い、銀色に輝く鋭利な針の束だった。 竜蛇は消毒布で針を拭いた。その動作も優雅だった。 あまりにも自然に、何でもないことのような空気だったので、これから行われるおぞましい行為を犬塚は予想できなかった。 竜蛇はそっと犬塚の手を取り、指先に口付けた。 「犬塚……痛いぞ」 竜蛇は犬塚の指と爪の間に針を突き刺した。 「───いッ……ぅあ"ッ!!」 犬塚はヒュッと息を呑んで、大きく背を反らせた。 竜蛇はことさらにゆっくりと、奥深くに針を押し込んでいく。 神経そのものを突き刺すような痛みに、犬塚は目を見開いて震えた。 竜蛇は二本目の針を手にして淡々と説明するように言った。 「この針は特注で作らせたんだよ。限界まで細くしてある。傷痕が残らないようにね」 今度は中指の爪の間に針を突き刺した。 「……ッ!!……ぐうッ!!」 脳天に突き抜けるような痛みに、犬塚の痩身が小刻みに痙攣した。 竜蛇は優雅な手つきで次の針を手に取るのを見た犬塚の全身の筋肉が緊張に強ばった。 「ハッ、ハッ、あぁ……ぐぅう!!」 犬塚は目を見開いて、荒い呼吸を繰り返した。 すでに両手の爪と指の間、十指すべてに銀色に輝く針が深々と突き刺されていた。 ───これは拷問だ。 犬塚は大きな悲鳴は上げなかった。必死で耐えている。 だが、竜蛇の目的が分からない。 情報が欲しい訳でも、犬塚を従わせる為でもない。「お前の望みだ」と言って、淡々と針を突き刺した。 相手の目的が分からない、終わりの見えない拷問に犬塚は漠然とした恐怖を感じていた。 竜蛇が犬塚の足元に移動した。 今度はつま先にキスをして、足の親指と爪の間に鋭利な針を突き刺した。 「ッッ!!……ぐぅうッ!」 ───まだ……まだ、続くのか!? 犬塚は竜蛇が針の入った小箱に手を伸ばすのを、絶望的な眼差しで見つめた。 「犬塚。もう止めてほしい?」 竜蛇が針を手に聞いてきた。 「針を止めて、これから俺とセックスをするのと、このまま突き刺されるの。どっちがいい?」 「……刺せ! 誰がお前なんかと!」 犬塚は侮蔑を込めた目で竜蛇を睨みつけながら吐き捨てるように言った。 「どっちも止めてって言えばよかったのに」 「な……ぅぐあ!!」 今度は足の中指に針を刺した。 「本当にお前は可愛いよ。犬塚」 ───あと8本。 鋭利な痛みに脂汗をかきながら、歯を食いしばり、犬塚は耐える準備をした。 ハッ、ハッ、と犬塚の短い呼吸が白い部屋の中で響いた。 両手、両足の指と爪の間、全てに深々と針が突き刺された。 ───お、終わった……? 神経を直接突き抜けるような鋭い痛みと、ドクドクと脈打つような熱くて重い痛みが同時に存在していた。 痛みに耐えている犬塚を眺めていた竜蛇が、そっと胸の尖りへと唇を寄せた。 「あ!……何を!?」 竜蛇は犬塚の乳首に舌を這わせ、ネットリと舐めた。 犬塚の裸身がギクリと硬直した。 「は、あぁ!……嫌だ! 何を……やめろぉッ!!」 竜蛇は乳首全体を唇に含むようにして、チュクリと吸い上げた。 舌先でチロチロと刺激し、前歯で甘噛みをした。そして、舌全体を使って何度も舐め上げる。 犬塚の乳首は硬く尖り、竜蛇の舌に過剰に反応した。 「嫌だ! い……や竜蛇! やめっ……あ!」 自由にできる首を左右に打ち振り、犬塚は必死で拒絶するが、竜蛇はおかまいなしに犬塚の乳首を愛撫し続けた。 ヌルヌルと別の生き物のように這いずりまわる舌に、犬塚は鳥肌を立てて叫んだ。 「嫌だッ!! いやだぁ!! やめろッ!!」 最後にちゅっと吸い上げて、竜蛇の唇がようやく離れた。 犬塚はほっと体の力を抜いたが…… 「あぁああッッ!!」 悲鳴をあげて大きく背を反らせた。 今まで針を刺されても呻き声や、押し殺した声で耐えていた犬塚が始めてその喉から絶叫を迸らせた。 執拗な愛撫によって立ち上がった乳首に、竜蛇が針を刺したのだ。 「あっ……あぁ!……ぅあ……あああぁあッ!」 横と縦に二本の針を十字架のように、乳首に貫通させた。 「あ、あ、はぁ、あぁあ……あ!」 ガクガクと震える犬塚のもう一方の乳首にも竜蛇は口付けた。 同じようにネットリと執拗な愛撫を施す。 「あ、あ、いやぁ……も、やめろ!! あぁあ!」 ちゅくちゅくと乳首を吸われて、犬塚は体をビクつかせて鳴いた。 嫌なのに、逃れられない。 関節を外され、両手両足の指に針を刺されて、不自由な体でろくに動けないまま舌で乳首を愛される。 一方的な愛撫によって、唾液に濡れた乳首は硬く立ち上がった。 犬塚の象牙色の肌に、赤みを増した乳首が卑猥だった。 「いやぁああッッ!!」 竜蛇はこちらの乳首にも同じように、十字に針を貫通させた。 小刻みに震えながら、犬塚は「あ……ぁ… …」と小さく喘いでいた。 竜蛇が針を貫通させた乳首を舐めたので、犬塚は声を抑えることができない。 竜蛇の舌遣いに喘ぎながら身悶えた。痛みと快楽におかしくなりそうだった。 「ひぃ……あっ!……や、やぁ……あぁああ」 赤みが差した頬に黒髪が張りつき、切なげに眉根を寄せ、しっとりと汗ばんだ裸身が妖艶だった。 竜蛇はゆっくりと唇を離して、真上から犬塚の顔を見下ろした。 「犬塚、俺を見ろ。犬塚」 少し正気を飛ばし、虚ろな瞳をした犬塚の顔の前で指をスナップさせパチパチと鳴らした。 数回、瞬きをして犬塚が竜蛇を見た。 竜蛇は愛しげに、それでいて少し困ったような表情で犬塚を見た。 「これはどういうことだろうね。犬塚」 「……」 「お前は俺が嫌いだろう?」 その言葉に犬塚の瞳に力が戻った。きつく竜蛇を睨みつける。 「なのにどうして、ココがこんな風になっているんだ?」 竜蛇の手が犬塚が股間に触れた。 「あ!」 犬塚のペニスは熱く勃ち上がり、先走りの汁でトロトロになっていた。 にちゃり、と粘着質で卑猥な音がした。 「なぜこんなに濡れている?」 「あ!……やめろ、お前が……お前のせいで……」 「俺? 違うだろう。」 竜蛇は呆れたようにため息をついてみせた。 「お前を気持ち良くするような真似はしていない。普通はね、犬塚。こんな事をされても痛いだけだよ。ここまでグチャグチャに濡らして、喜んだりはしない。」 竜蛇は犬塚の手を取り、確認させるように己のペニスに触れさせた。 「お前のペニスは淫乱な女のアソコのように濡れているだろう?」 「ち、違う! 違う……ちがう!」 犬塚が首を振って必死に否定するのを許さず、竜蛇は犬塚の顎を強く掴んだ。 「ぅ、ぐ」 長く骨張った指で、犬塚の舌を引きずり出した。 「嘘つきな舌はコレか?」 ベロリと犬塚の舌をひと舐めして竜蛇が嗤う。 ───やめろっ!! 「───んんぅぁあッッ!!」 竜蛇は犬塚の舌に針を貫通させた。 犬塚は痩身をバウンドさせ、針で貫かれた瞬間に絶頂に達していた。

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