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蛇は愛を囁く
「ハァ……ハァ……ッ」
「なんだ犬塚。今のでイッたのか?」
竜蛇は犬塚のペニスへの愛撫をやめなかった。
「……んぁ!!」
イッたばかりの敏感な亀頭をぐちゅぐちゅといたぶられて、犬塚は悲鳴を上げた。
「ぁあ!……ひ、やぁ……あ、あ!」
もはや苦痛の方が強い快楽に、犬塚は身悶えた。
「犬塚。普通は舌に針を刺されてイクなんてありえないよ。どういうことなんだ? お前、俺に会う前からおかしなプレイをしていたのか?」
「ひ、がう……あぁ!……ひが……ひ、ぃ!」
しとどに汗をかき、淫らに裸体をくねらせる犬塚を言葉でも責めた。
「嫌いな男に拷問されて感じるのか? お前は。俺を軽蔑するような目で見ていた割に、蓋を開ければお前の方こそ変態だったじゃないか、犬塚」
「ひ、やぁ、あ!……ひ、がう……が……やらぁ、あぅ」
激しく亀頭を責められ、犬塚がガクガクと震えた。
「───は、あ! あっ……んあぁ!」
ビクンッと、大きく犬塚の痩身が跳ねた。
「またイッたな」
だが、竜蛇は手を離さない。
「ッッ!?……んあぁ……ヒィ! や、ぁあ!」
針を貫通され、舌を伸ばしたまま閉じることが叶わなくなった口からダラダラと唾液を垂らしながら、犬塚は身も世もなく鳴いた。
「もっとか? 欲張りな子だね」
「ヒ!……がう、ぁ……ひ、がう……あぁあ……っ!」
不自由な舌で、必死に「違う違う」と否定する犬塚はたまらなく可愛いかった。
だが、竜蛇は容赦なく尿道と亀頭を刺激して、捏ねるように責め続けた。
「いっ……ぃ、ひ!……あ、あ、は……あ、ああぁあ……は!」
ガクガクと犬塚の腰が痙攣して、見開いた目から生理的な涙が溢れた。
「あ、あ、はぁああ!……ひ、やぁあ!……あぁああああッッ!!」
拷問のような責め苦に犬塚の体が大きく反って、絶叫と同時に勢いよく射精した。
だが、ビシャビシャと漏らしたソレは精液ではない。
竜蛇はようやく手を離し、しとどに濡れた手を振った。
「やれやれ、今度は潮吹きか。お前という男は、どこまで淫乱なんだ。犬塚」
犬塚はショックを隠せず、目を見開いたまま、荒い呼吸を続けた。
「俺の事が嫌いだと、嫌だ嫌だと言いながら、感じまくっているじゃないか。誰が相手でもこんなに淫らなのか? お前は」
竜蛇の言葉に、犬塚の目から生理的では無い涙が溢れた。
「……ふ……ひがぅ……うぅ……ひ、が……っ」
ハラハラと泣き出した犬塚を見て、竜蛇はそっと舌に刺した針を抜いた。
「……っんあ!」
竜蛇はまるで癒すように犬塚の舌を柔らかく舐めた。
そのまま深く唇を合わせ、舌を絡めて深い口付けをした。
「……ん、ん」
泣きながら犬塚はされるがままになっている。
竜蛇は唇を解き、琥珀の瞳で犬塚を見つめた。
先程まで追い詰めるように犬塚を責めていたというのに、竜蛇の瞳には侮蔑も蔑みも無かった。
ただ静かに、愛おしい者を見る目で犬塚を見ている。
「お前のせいじゃない。犬塚」
「……」
「俺のせいだ。俺が悪い」
犬塚の黒曜石の瞳から新たな涙が溢れた。
「お、まえのせいだ……おれ、は……こんな…こんなの……違う……おれじゃ、ない」
「犬塚……」
「お前が……お前が……」
「ああ、俺のせいだ。お前は悪くない。犬塚」
竜蛇が犬塚の背と頭を抱くように腕を回して、優しく言った。
自分を拷問し、淫らに責めた張本人なのに……犬塚は竜蛇の腕に抱かれ、その声と腕に安心したように身を任せてしまう。
竜蛇の手が犬塚の頭を撫でた。まるで幼子にするように。
「いい子だ。犬塚。可愛い。愛しているよ」
この部屋に入ってから始めて愛を囁かれた。
その言葉に何故か安心してしまう。犬塚は竜蛇の腕の中で目を閉じた。
竜蛇は優しく、甘く、囁き続ける。
その声色が心地よくて、いつしか犬塚は意識を手放していた。
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