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赤い蝋燭
犬塚は潤んだ瞳で訝しげに竜蛇の手元を見た。
竜蛇が手にしていたのは赤い蝋燭だった。
「……うぅ」
竜蛇は蝋燭に火を付けた。
蝋燭の窪みに溶けた蝋が溜まるまで、ベッドに片膝を乗り上げて、竜蛇は犬塚に話して聞かせた。
「何度も言うが、犬塚。俺はお前を可愛いと思っている」
犬塚は揺れる蝋燭の炎をぼんやりと見つめた。
「だからこそ責めずにはいられない。これは生まれ持った性 だ」
───そして犬塚。お前は責められなければ燃えない質だ。俺達はぴったりと合う。そう思わないか? 犬塚。
竜蛇は心の中で独り言ちた。
溶けた赤い蝋がたっぷり溜まった。
竜蛇は犬塚の前髪をぐっと掴み、顎を少し反らせて固定した。
「……ううっ!?」
犬塚の眼を硬質な輝きを放つ琥珀の瞳で鋭く見据えて言った。
「犬塚。萎えさせるなよ」
竜蛇が手首を傾け、溶けた赤い蝋が窪みから溢れた。
「ん"ん"ぅ────ッッ!!」
くぐもった悲鳴をあげて、犬塚の裸身がベッドの上でバウンドした。
身悶え、不自由な体で暴れ、ガチャガチャと拘束具が鳴り続ける。
竜蛇は熱く溶けた蝋を犬塚の勃起したペニスに垂らした。
───アア! 熱い!! アツイッ!!
犬塚は男の最も弱い部分に溶けた熱い蝋を垂らされ、目を見開き必死で暴れた。
「ぅぐ!……ん"、うぅッ!! んぅ───ッ!!」
竜蛇は暴れる犬塚の髪を掴み直し、より強く押さえ付けた。
その間もボタボタと熱い蝋は犬塚のペニスに落とされ続ける。
───ヒ! あ、熱い! 熱いぃッ!!
アアァ!! やめてくれっ!
「フッフッ……ぐぅうん"、んんぅっ!!」
口枷を噛まされて言葉を発せない犬塚は、竜蛇にやめてくれるように必死に目で訴えた。
竜蛇が手首を立て、蝋が零れ落ちるのが止まった。
「……ふ、ぅ……んう、う……」
犬塚はヒクヒクと震えながら、体に入っていた力を少し抜いた。
だが、竜蛇は犬塚のために止めたわけではない。
新たに熱く溶けた蝋を窪みに溜めていただけだった。
「うう!! ん、ぐぅう! ん"───ッッ!!」
再び犬塚の股間に熱く溶けた蝋が垂らされた。
最初は少し上から垂らされていたが、竜蛇は徐々に手首を下げてゆき、犬塚のペニスのすぐ上から熱い蝋を垂らした。
固まりつつある蝋の上から、重ねるように熱く蕩けて液体になった赤い蝋を落とし続ける。
「ん"ん"ぅう"───ッ!! うっ! ん、ぐぅ!! ううッ!!」
焼けるような熱を自身のペニスに感じて、犬塚の背中がベッドから浮き上がる程に仰け反る。
竜蛇は犬塚の髪が引きちぎれそうになる程、鷲掴みにして顔を背けることを許さなかった。
──熱い! 熱い熱いッ!! 焼けてしまう! ア、ア、アァアッッ!!
蝋で赤く包まれた犬塚自身に、いまや触れんばかりの近さで熱い蝋が垂らされる。
「ん"───ッッ!! ぅうう! ふっぐ! んぅう!!」
犬塚はくぐもった悲鳴をあげ、両脚を突っ張らせた。
脂汗をかき、顔を真っ赤にしている犬塚の苦悶の表情を竜蛇は食い入るように見つめ続けた。
犬塚の黒曜石の瞳から涙が溢れた。
竜蛇は犬塚の下肢から蝋燭を遠ざけた。鷲掴みにしていた犬塚の頭も解放する。
「……ん……ふ」
犬塚は小刻みに震え続けている。
竜蛇は蝋燭を持っていない方の指先で、芯を摘むようにして火を消した。
ジュッと小さな音を立てて灯りが消える。
蝋燭をサイドテーブルに置いて、フッフッと荒く呼吸する犬塚を竜蛇は見つめた。
上気して汗ばんだ頬に黒髪を張り付いている。瞬きをする度、目尻から涙が溢れた。
まるで激しいセックスをした後のような顔をしている。
竜蛇はベッドに乗り上げて犬塚の後頭部を鷲掴み、ぐっと顔を起こさせた。
「ッッ!?」
犬塚の顔に自らの顔を寄せて耳元で囁く。
「見ろ。犬塚」
竜蛇に言われ、赤い蝋燭に包まれた己のペニスを確認した。
「いい子だ。萎えさせなかったな」
赤い蝋に包まれ、表面がデコボコとしており、グロテスクにも見える犬塚のペニスは勃起したままだった。
「ううっ!?」
犬塚が息を飲んだ。
首を振って目を反らそうとするが、竜蛇が許さない。
ぐっと後頭部を掴む力を強めた。
「見るんだ、犬塚。見事じゃないか」
「んぅう!!」
「淫乱で、俺好みだ」
竜蛇は犬塚の頬に唇を触れさせたまま甘く囁く。
───嫌だ! どうしてッ!?
犬塚は自分のペニスから目が離せなくなった。
あんな拷問のような事をされたのに、ソレは硬く勃ちあがり、時折ピクピクと揺れた。
───嫌だ……嫌だ嫌だ! こんなこと……ッ!!
竜蛇は犬塚の口枷を外した。
「……ん……あ」
「……今夜はお前の甘い声を聞かせてくれ」
自分の肉体の反応にショックを受けている犬塚に竜蛇は覆いかぶさった。
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