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象牙を這う蛇
竜蛇は犬塚の耳朶を甘噛みして、そっと舌で舐め上げた。
耳裏から首筋にかけて啄ばむように軽いキスを降らせる。指先や手のひらを犬塚の二の腕の内側や脇腹を這わせた。
「……はっ、ぅ」
犬塚の体がピクリと揺れた。
先程までの強引さが嘘のように、竜蛇の唇と手が犬塚の裸身を優しく這い回る。
竜蛇の唇が乳首を含んだ。
「あっ……」
もう一方の乳首は指で優しく愛撫した。
もう片方の手は大きく開かされた太腿の内側の、鞭打たれて熱く脈打つ箇所を軽く撫でていた。
「……や、ぁ……ふぅ、は!」
ピクリ、ピクリと犬塚の体が竜蛇の愛撫に反応する。
竜蛇の美しい形をした唇が反対の乳首に移動した。またネットリと舐め、吸われる。
「や、めろ……いやだ…あぁ……」
犬塚が弱々しく首を振って、拒否の意を表す。だが竜蛇は甘い愛撫を続けた。
脇腹を舐め、臍に舌を差し入れる。
犬塚の上半身を竜蛇の舌が蛇のように這い回っている。
「や、嫌ぁ……いや、やめ……て、あぁあ……やだぁ、は、あ。」
やめて、やめてと小さな声で犬塚は嫌がるが、赤い蝋に包まれた象徴は硬く勃ち上がったままだった。
切なげに眉根を寄せ、頬を染めて。
薄く色付いた唇から熱い吐息を吐く。
誰が見ても感じ入っているようにしか見えなかった。
竜蛇の舌が這い上がり、拘束され、無防備に晒されている犬塚の脇を舐めた。
「ああっ! やめっ……ん、あ!」
くすぐったいような感覚に犬塚が身悶える。竜蛇は二の腕の内側に唇を滑らせ、甘噛みをした。
そして長く骨張った指で犬塚の顎を取り、唇を合わせた。
軽いキスから徐々に濃厚な口付けへと深めていく。
竜蛇の舌が上顎を舐められ、犬塚はゾクゾクして拒むのを忘れて口を大きく開いた。
唾液を啜り、互いの舌を深く絡ませる。
角度を変えて、吐息を分け与えるような甘い口付けを続けた。
犬塚にとって互いの性感を高めるようなキスは初めてだった。
あのペドフェリアの男から開放されてから、犬塚は誰ともセックスをしていない。男とも女とも。自慰ですら、ほとんどしていなかった。
───竜蛇が、初めてだった。
口付けの合間に竜蛇が甘い声音で囁く。
「……犬塚……可愛い……愛しているよ」
唇に直接吹き込まれるような言霊に犬塚は震えた。
「……お前が愛しい……犬塚……」
竜蛇は低く、よく通る声をしている。
その声に極上の甘さを含ませ、口説くように囁き続けていた。
それは中毒性のある甘い毒のように、犬塚の唇に注がれ続けた。
「あ……は、んぅ……ん、ん」
瞼を閉じて、黒く長い睫毛を震わせて、犬塚は竜蛇のキスに酔った。
竜蛇の唇がそっと離れて、代わりに骨張った指が犬塚の口に差し入れられた。
「う、むぅ……んん……」
犬塚は二本の指を無意識に舐めしゃぶった。
「……いい子だ、犬塚。とても可愛いよ」
竜蛇が犬塚の口内から指をそっと抜いた。その手を除徐々に下肢に下げていく。
唾液に濡れた竜蛇の指が犬塚のアナルに触れた瞬間……夢から覚めたように犬塚の全身が硬直した。
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