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駆け引き

蒼白な顔をして、犬塚は必死に竜蛇に縋った。 「……頼む、なんでもする……やめてくれ!」 「犬塚」 恐れから、すっかり犬塚のモノは萎えてしまっていた。 竜蛇は犬塚のアナルに指を触れさせたまま告げた。 「では、キスを。犬塚」 「なに……」 「お前からキスをしてくれ。犬塚」 竜蛇は真正面から犬塚の双眸を見つめた。 琥珀の瞳からは、性的興奮も嗜虐性も感じられなかった。 犬塚は少し顔を上げ、自ら震える唇を差し出す。そっと、竜蛇の整った唇に触れさせた。 「これじゃあ子供のキスだ」 竜蛇が笑って言う。 「犬塚。舌を絡めて、さっきのように、もっと深いやつをくれ」 「……っ!」 犬塚は目尻を朱に染めて、少しの躊躇いのあと唇を開き、舌を伸ばして竜蛇の唇を舐めた。 竜蛇の唇がわずかに開いたので、舌を差し入れて竜蛇の舌を舐める。 ふいにアナルに触れていた竜蛇の指が動き、揉み解すようにして愛撫した。 「嫌だっ!! やめろぉ!!」 竜蛇から唇を離して、犬塚が叫ぶ。 「犬塚。やめるな」 「嫌だ! いや……あっ!」 犬塚の顎を掴み、竜蛇は視線を合わせた。 「俺を飽きさせるな……ほら、キスを。犬塚」 犬塚は震えながら、潤んだ黒い瞳で竜蛇を見上げた。その眼差しに竜蛇の背はゾクリとする。 それを悟られないように、薄く微笑んで犬塚を促した。 瞼を下ろし、眉をきゅっと寄せて、再び犬塚は竜蛇に口付ける。 今度は最初から舌を絡めて、竜蛇の口内を舐めて愛撫した。 「……んんっ!?」 竜蛇の指がいたずらに犬塚のアナルを捏ねるように愛撫したので、犬塚の動きが止まった。 「こら。やめるな。犬塚」 「や……あぅ、んむ……ぅ」 竜蛇を飽きさせてはいけない。 やめてほしい一心で、犬塚は竜蛇の唇に吸い付き、舌を伸ばした。 しばらくは犬塚の好きにさせていた竜蛇だが、自らの舌も犬塚の口内に入れて絡めはじめた。 「……んっ……ふぅ、んん……」 自然と口付けは深く、激しくなる。 唾液の絡む音を立て、互いの舌を吸い合った。 竜蛇はのめり込む様にして犬塚の唇を貪る。 「んん……ふっぅ……む、んぁ……」 角度を変える度に、犬塚が吐息のような声を漏らした。 どちらのものか分からない唾液が、犬塚の口端から首筋へと伝う。 いつしか犬塚は夢中で竜蛇の唇を、舌を吸い、キスに溺れた。 竜蛇が犬塚の頭を抱えるようにして、更に深く唇を密着させる。 ぴったりと胸を合わせ、膝で犬塚の脚をもっと開かせた。 萎えていたはずの犬塚のペニスは再び熱を取り戻しつつある。 情熱的なキスだった。 竜蛇は無言でキスを続け、犬塚の舌を食んだ。 「……ん、あ」 口付けは深く、濃厚になっていく。 犬塚が我を忘れて、口付けに意識を蕩けさせ始めた頃……竜蛇は指にぐっと力を込めた。 キスをしながら、ゆるゆると揉み解していた犬塚のアナルに、骨ばった中指を押し入れた。 「んんッ!?───ん、むぅあ! アアッッ!!」 驚いて逃げを打つ犬塚を離さず、頭を鷲掴みにして、深く唇を合わせた。 「んんッ!ん───ッッ! うぅ、んんぅ!」 根本まで、犬塚のアナルに長い指を埋めた。 「う、はぁッッ! や! 嫌ァア───!!」 唇を解くと、犬塚が大きく反って叫び声を上げた。 「嫌だ! いやぁ……! ぬ、いてっ! 嘘吐き! しないって……!!」 竜蛇は落ち着かせるように、大きく反る犬塚の喉にキスを落としながら答えた。 「嘘は言っていない。誰もやめるなんて言っていないだろう」 犬塚の内側を確かめるように、竜蛇の指が蠢く。熱くて、きつくて、淫らな肉壁だ。 「ひぃ、い!」 犬塚は歯を食いしばって耐える。 竜蛇は犬塚の首を舐めあげて、耳に唇を添わせた。 「さあ……お前のイイトコロはどこだ」 「ッ!? やめろっ!!」 犬塚は必死になってもがくが、両手両脚は拘束具で繋がれ、竜蛇に伸し掛かられて無意味な抵抗しかできない。 無意味どころか、竜蛇の体の下でもがくことは、男を煽る行為でしかなかった。 「あ!───いやだぁああッッ!!」 ビクンと犬塚の痩身がバウンドした。 竜蛇の指が犬塚の前立腺を捕えたのだ。 「あ! あ!……やぁ、だ……嫌……や、めて、ぇ……」 ガクガクとその身を震わせて、犬塚が悲痛な声を出した。 「気持ちがいいだろう。ココは」 「嫌……嫌だ……ぁあう!……はっ……あ!」 竜蛇は指ひとつで、犬塚を淫らに身悶えさせる。 「あぁああ……いやだ、嫌、やめて……お願い……たつ……あ! やめて、ぇ……や」 犬塚が両脚を突っ張らせ、ガチャリ、と拘束具が鳴る。 唯一自由にできる首を振って拒否をするが、竜蛇は許さない。犬塚は唇を戦慄かせて哀願するが、その憐れな声音に興奮するのだ。 「いや! いやぁ……ああぁあ……やめてやめて……ゆるし……ああ!」 「ああ……すごいな。犬塚」 犬塚のアナルは熱く蕩けて、肉壁は蠢きながら竜蛇の指に絡んだ。 竜蛇は初めて犬塚を抱いた夜のことを思い出す。 あの夜も、離すものかと犬塚の内壁は竜蛇の男根に淫らに絡みついた。 口では嫌だと拒否をして。 叫び、嫌がり、悲鳴のような喘ぎを上げていたが、後孔を責めに責めれば、熱い啜り泣きに変わり甘く鳴いたのだ。 竜蛇は二本目の指を犬塚の中へ埋めた。 「あっ! あぁああ……ああ……ひぃ、い」 犬塚は悲痛な喘ぎを漏らし、快楽に啜り泣く。 目が虚ろになり、理性を飛ばしつつある犬塚の頬を竜蛇が軽く叩いた。 「あっ……」 「犬塚。意識を飛ばすんじゃない。俺を見ろ」 竜蛇を見る犬塚の目に力が戻った。 「それでいい」 竜蛇が満足気に微笑んだ。

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