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あの夜
結局、明け方近くまでセックスをして、二人は泥のように眠った。
竜蛇は昼前になって、静かに目覚めた。
何度もイカされ、気絶するように眠った犬塚は、まだ竜蛇の腕の中にいた。
竜蛇に背を預けるようにして眠っている。
昨夜の犬塚とのセックスは最高の喜びを竜蛇に与えた。
竜蛇は犬塚のうなじに唇を寄せ、眠る犬塚をそっと抱き締めた。
あの夜とは、何もかも違った。
───初めて犬塚を抱いた夜とは。
犬塚を捕まえ、拘束して、抱いた。
動けぬ体で必死にもがき、哀願し、絶望的な悲鳴をあげながらも、犬塚の体は竜蛇の男根を喜んで咥え込んでいた。
背後から激しく突き立てて、竜蛇は犬塚のアナルを責めた。
バランスよく筋肉のついた犬塚の背中が汗で湿り、若木のようにしなる様は妖艶だった。
「あぁああ! いやっ!……やっ、あ!あ! ひぃ……あぁああ!!」
悲痛な哀願は、甘い啜り泣きへと変化していった。
「いやぁ……ぁあ、いやだぁ……あ!……やめ、て……嫌、嫌ぁ!」
「何が嫌なんだ? こんなにして……」
犬塚の言葉は抵抗というよりも、逆に更なる快楽をねだっているような声音だった。
竜蛇の手が前に回った。犬塚の濡れて勃ち上がったペニスを扱く。
「あっあっ───は、あぁあ……やだぁああッ!」
犬塚が目を見開いて、大きく反った。黒曜石の瞳からハラハラと涙が溢れた。
「も、やめてぇ……こんな、嫌だ……あ、あ、あぁああ!」
「犬塚……」
竜蛇は両手で犬塚の腰を掴み、ガツガツと激しく後孔を犯した。
「ああああッ! ヒッ───ぃあ!!」
拘束具に囚われた犬塚の指が、救いを求めるように、閉じたり開いたりともがいた。
「イクぞ……犬塚。俺のものにしてやる」
激しいスラストに犬塚が叫んだ。
「ぅあっ! あっ! やっ───ッあ、ぁああッ!!」
竜蛇の雄の迸りを体内で感じた瞬間、犬塚も勢いよく射精した。
ぐったりとした犬塚を黒革の拘束具は付けたまま鎖から外し、今度は後ろ手に拘束した。
竜蛇は犬塚を抱き上げてベッドに運び、再び犯した。
「ひ、ぃあ!」
ビクンと犬塚の脚が跳ねた。
「まだだ。犬塚」
「う、うぅう……あぁ…も、やめてぇ……ぃやぁ! あ、あ!」
体位を変えて何度も犯した。
犬塚の肉体は熱く、肉壁はねっとりと男根に絡みつき、どんな男をも狂わせる程に淫らで貪欲だった。
竜蛇は我を忘れて犬塚に溺れた。
夢中になり、犬塚の後孔を責めに責めた。
「あ……ぁ……」
虚ろな目をした犬塚が、譫言のように呟きはじめた。
『あぁ……イイ……き、もちいいです』
「……犬塚?」
それは日本語では無かった。
犬塚は英語で、淫らな言葉を呟きはじめた。
『イイです……ご主人様……ぁあ! 気持ちいい……あ、あ!』
「!?」
竜蛇は秀麗な眉を顰めた。
『……ぁあ…淫乱な黄色い犬に……中出しして……くださ……あ、欲し……です』
「……やめろ。犬塚」
竜蛇は犬塚の頬を張った。
『ぁあ!……もっと…ご主人様……』
だが、犬塚は竜蛇を見ていない。
完全に意識を飛ばしている。
幼い頃にペドフェリアに仕込まれたまま、英語で淫らにねだり続ける。
竜蛇の全身を鋭い炎のような怒りが突き抜けた。
屈辱は、甘受してしまえば、屈辱では無くなる。
犬塚はペドフェリアの男に言われるままに、どんな淫らな事もやってのけた。
眠って、目覚めれば、最後に自分が何をして、何を口走ったかは殆ど覚えていなかった。
心を遠いところに飛ばし、肉体だけで全てを受け入れることで、犬塚は精神の最後の砦を守ってきたのだ。
自分を抱いている竜蛇から、心を遠いところへと逃がし、最後の最後で陥落させない犬塚を許すことはできなかった。
抱き人形など欲しくはない。
犬塚の全てが欲しいのだ。
虚ろな目をした犬塚に、失望どころか、益々執着心が増した。
犬塚を仕込んだペドフェリアの男に殺意が湧く。だが、すでにブランカが殺している。
やり場のない怒りに、竜蛇はいっそう激しく犬塚を責めた。
『あぁあ! ご主人様……気持ち、イイです! ぁあっ……んぐッ!』
「……黙れ!」
竜蛇は犬塚の口を手のひらで塞いだ。
ギシギシとベッドを軋ませ、狂ったように犬塚を犯した。
「んんう!……んっ!……んっ!」
「……逃さないぞ、犬塚……絶対に、俺を受け入れさせてみせる」
「……ふっ、う……ん! ん!」
虚ろな瞳の犬塚に宣言した。
「お前は俺のものだ……ッッ!!」
「んんぅう────ッ!!」
た犬塚の最奥に執着心の証を熱く迸らせたのだった。
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