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情報屋1

   ───ネオ・トーキョーのとある部屋。 ブランカは一人でソファに座って、約束の相手を待っていた。 今夜、ここで情報屋と会うことになっている。代理ではなく、ブランカ本人が直接会うことは珍しいが、この優秀な情報屋はブランカの影武者の存在も知っている。 ブランカ本人でなければ、情報は渡さないという約束だ。この部屋も情報屋の指定した部屋だった。 用心深いブランカにしては珍しい行動だったが、この情報屋に対しては例外だった。 「ブランカさん。お久しぶりです」 にこやかな笑みを浮かべて男が部屋に入ってきた。 40代後半の背の高いひょろりとした男だ。黒いスカジャンからのぞく首筋や手首にタトゥーがちらりと見えていた。 スキンヘッドの側頭部には、竜のデザインのトライバルなタトゥーがあった。 切れ長の細い一重の目に、色付きのメガネをかけている。みるからに胡散臭い風体だが、トーキョーで一番の情報屋だ。 ブランカは無言で男を見た。 「なんや。相変わらず愛想ないなぁ」 へらっと笑って、関西なまりの男、馬頭(めず)は対面のソファに座った。 「ハイ。これね」 A4サイズの分厚い封筒をぽんとローテーブルに置いた。 「……」 ブランカは封筒から資料を出して、ざっと目を通す。ふと一枚の写真に目を止めた。 犬塚だった。 監視カメラの映像を切り抜いた写真だ。はっきりとは見えていないが、銃を突き付けた青年とマンションへと入っていくところだ。 「先日の停電の時のや。復旧したときにマンションの監視カメラに写っとった」 ブランカは黙って写真を見ていた。 「一か月ちょい、監禁されとったみたいやね。蛇堂組の組長の竜蛇志信さんに」 「何の為に?」 ようやく口を利いたブランカに、馬頭はニヤッと笑った。 「愛人として囲うとるんや」 「……」 「どうも本気みたいよ。今、犬塚は監禁されてた部屋には戻されてへん。もっと難攻不落な場所に移されたで」 ブランカが顔を上げて続きを促した。 「志信さんの自宅や」 にやりと笑って馬頭が答えた。

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