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情報屋3

   「これが前園雄介の調べていた事件ね」 ローテーブルにA4サイズの茶封筒を置いた。 「古い事件やけど未解決やわ。志信さんの考えてる通り、前園雄介を殺したのはブランカやね」 「そう。依頼人は?」 馬頭はちろっと舌を出した。 「ほんまの依頼人は分かってへん」 「使えないな」 「そんなん言わんといて。えらい用心深いんや。仲介人を二人も通しとる。最後の一人まではいきつけへんかったけど、ブランカに直接依頼したんはコイツ」 ローテーブルに広げた資料をトントンと指で叩いた。 「コイツは前園雄介が死んだ三日後に仏さんになって海に浮いとった。その仲介をしたんがこの中国人や。こいつも死んどる。十年前に病気でな。前園雄介とは関係ない死因やけど。ほんまの依頼人に繋がる情報が途切れとるんよ」 「そう」 資料を見る竜蛇の伏せた瞳をうっとりと見ながら、馬頭が言った。 「もっとブランカを調べよか?」 「……そうだな」 竜蛇は分厚い封筒をテーブルに乗せた。 「多くない?」 「追加の依頼の前払い分だ」 「ありがと。だから志信さんのこと好きやわぁ」 「馬頭。頼んだよ」 竜蛇は資料を手にして立ち上がった。 「あ。ブランカやけど。まだトーキョーにおるよ」 「……そう」 「あんたの可愛い飼い犬。しっかり首輪つけとき」 「余計なお世話だ」 振り向きもせず部屋を出ていく竜蛇の背中を見つめながら、馬頭は大袈裟にため息をついた。 「あ~あ。二回も余計な世話やって言われてもうた」 本当は「ブランカが犬塚を探して、あんたの事を調べている。依頼を受けたのは自分だ」と教えてやりたくなったが、どうにか堪えた。 こんなでも馬頭はプロの情報屋だ。依頼人の事はこれ以上話せない。 ……まぁ、調べろと言われれば別だが。 ───さて、どちらが先にチェックメイトすんねやろ。 いつでも品があり余裕の表情をしている、あの美しい男が追い詰められるのを見るのも、ひどく魅力的だ。 一人、部屋に残された馬頭はニヤリと面白そうに笑った。

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