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夜のふたり1
夜遅くに竜蛇が帰ってきた時、犬塚は起きていた。
「起きていたのか。犬塚」
間接照明だけを灯して、ソファに座っていた犬塚に竜蛇は微笑を浮かべた。
眠っているだろうと思ったが、起きて自分を待っていた犬塚に心をくすぐられる。
「……」
犬塚は無言で竜蛇を見上げた。その眼差しに誘われるように、ジャケットを脱ぎながら竜蛇は犬塚の元へ歩んだ。
「昨夜の無防備な寝顔も可愛いかったが、そうして俺を待っているお前も可愛いよ」
ソファの背にジャケットをかけて、背後から犬塚の顎に指をかけて喉を反らせた。
「待っていたわけじゃ……んぅ」
犬塚の可愛い反論を遮るように、身を屈めて背後から口付ける。
「……ん……ん、ふぅ」
ちゅ、と音を立てて竜蛇の唇が離れた。
「……ただいま。犬塚」
犬塚は竜蛇を咎めるように睨んだが、その黒い瞳は潤んでいて逆効果だった。
「煽るな」
「煽ってなんかいない」
竜蛇の骨張った指が、犬塚の喉をくすぐるように軽く撫でた。
「お前は自覚無く俺を煽る。覚えておけ」
「うるさい」
「やれやれ。口が悪いね、犬塚」
竜蛇は笑って、上体を起こす。
「シャワーを浴びてくる。一緒にどうだ?」
「……もう浴びた」
「そうか」
竜蛇は「先に寝ていて構わない」と、犬塚の黒髪にキスを落としてから部屋を出て行った。
犬塚はソファの上で両膝を抱えて座り、ぼんやりと竜蛇が出て行ったドアを見つめた。
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