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夜のふたり3
竜蛇は犬塚の首に手を這わせ、少し伸びた襟足を柔らかく撫でた。
「お前が鎖に繋がれ、不自由でいる姿を見るのが好きなんだ。まぁ、足枷は単に俺の趣味だな」
「きさま……っ!」
カッとして竜蛇に吠えようとした犬塚の首をぐっと引き寄せ、竜蛇は唇で唇を塞いだ。
犬塚が自分とのキスに弱い事は分かっている。
いつも口付けが長引くのは、犬塚が唇を離したがらないからだ。
セックスの時の淫らな反応とは裏腹に、甘いキスをねだるのだ。そんな犬塚も可愛かった。
「……んっ……ふぅ、ん」
角度を変えて、舌を絡ませあい深く口付ける。静かな部屋に響く唾液の絡む音が卑猥だった。
「……愛してるよ。犬塚」
唇を解き、竜蛇は甘く囁いた。そのままベッドへ誘われ、犬塚の胸が早鐘を打つ。
この男とは何度もセックスをしている。しかも、アブノーマルな行為もだ。
なのに、甘くキスをされ、こんな風に優しく誘われて……。
犬塚は揺れ動く自分の感情に戸惑い、羞恥に目尻を朱に染めた。
……こんな……これでは、まるで……。
だが、竜蛇はベッドに横たわった犬塚を抱きしめるように腕の中に包み込み、「おやすみ。犬塚」と、目を閉じてしまった。
───何もしないのか?
犬塚は唖然として、竜蛇の顔を見た。てっきり竜蛇は自分を抱くのだと思った。
犬塚の体を気遣っているのだろうか?
自分の手で痛めつけたくせに。
気にせず、いつものように奪えばいいのに……
そんな考えが浮かんだことに我ながら驚いた。
これでは、自分が竜蛇とセックスしたがっているみたいではないか。
モヤモヤとした気持ちのまま犬塚は竜蛇の寝顔を見ていたが、竜蛇の体温の心地良さに、いつしか眠りについた。
誰かと体温を分かち合うように眠ることなど初めてだった。
竜蛇と出会ってから、初めて知った事が多い。
吐息を分け合う甘い口付けや、自分の意思でセックスをすること。嫉妬し、嫉妬されること。
竜蛇は自分をどうしたいのだろう。まどろみの中でぼんやりと犬塚は思った。
それに、自分はどうなりたいのだろうか……?
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