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羞恥3
涼が「おっと」と言って、キッチンから出ていこうとした。
「涼。そこにいろ」
だが、竜蛇は出ていくなと命じた。犬塚はぎょっとして、押さえつけられたまま首を捻って竜蛇を仰ぎ見た。
「竜蛇ッ!?」
竜蛇は優雅な微笑を浮かべている。犬塚は蒼白になって暴れた。
「何を!? 何を考えているッ! 離せ!」
キツく縛られた両腕は抜けそうにない。背後から体重をかけて押さえられ、息が詰まる。
「……ぐっ」
竜蛇は犬塚の表情をじっくりと観察するように見ていた。
犬塚は目を見開いて、信じられないという顔をしている。その顔に竜蛇はゾクゾクした。
あの倉庫での仕置き以来、一週間。犬塚とセックスをしていない。
毎夜、犬塚を腕に抱いて眠ったが、セックスもプレイもしてはいない。
犬塚が自分の腕の中で悶々として、中々寝付けずにいた事は分かっている。
犬塚から自分を求めるなど、死んでもしないだろうと思うが、どこか誘うような眼差しを送ってくる犬塚を可愛いと思って密かに楽しんでいた。
先程、犬塚は竜蛇の声に小さく震えた。
───犬塚は欲情していたのだ。この自分に。
竜蛇の身の内を歓喜が走った。
すぐにでも犬塚が欲しくなった。すぐ側にいるのに手を出してこない竜蛇に犬塚は焦れていたが、竜蛇の方も限界だったのだ。
竜蛇の口付けに弱いくせに、涼の存在を気にして抵抗した犬塚に対して、ほんの少し残酷な気持ちになった。
竜蛇の悪い性だ。愛する者を追い詰めずにはいられない。
ドロドロに甘やかしたい気持ちと、残酷な真似をして悲痛に泣かせたいという欲望。
竜蛇という男の内には、相反する感情が共存していた。
「やめろッ! 離せッ! 竜蛇ァ!!」
片頬をカウンターに押し付けられたまま犬塚が叫んだ。
「涼。見ていろ」
竜蛇の言葉に、犬塚がヒッと息を呑んだ。
涼はシンクに凭れるようにして、犬塚の方を向いて立った。
「ごめんね。犬塚さん」
「……涼!?」
「これでもわたしのボスなのよ」
涼は申し訳なさそうな顔で、さらりと言った。
「な……なにを!? お前ら……ッ!!」
優雅だが残酷な微笑を浮かべて、竜蛇が犬塚のガウンを捲り上げた。
「やめろぉッッ!!」
ガウンの下は裸だ。尻を剥き出しにされて犬塚が叫び、暴れ出した。
竜蛇が犬塚の尻をパンッと掌で叩いた。
「ひっ!!」
「暴れるな」
涼の目の前で尻を叩かれて、犬塚の顔が屈辱で赤く染まった。
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