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トレーニングルーム2

  あれから交代でシャワーを浴びて、上の部屋へと戻った。 犬塚の新しいガウンはシャワールームに用意されていた。 涼に笑ったことを指摘されて、犬塚は気まずさから不機嫌な顔をしていた。 「別に照れなくてもいいのに」 「うるさい」 「犬塚さん、ツンデレね」 「うるさい」 「組長には可愛く微笑んだりするの?」 「黙れ」 「あ~、してないのね。笑いかけてあげたらいいのに。喜ぶわよ」 「いいから……いい加減、黙ってくれ」 犬塚は疲れたように項垂れた。 「はいはい。じゃあ、遅くなったけど軽くお昼作るね」 涼は笑いながら、キッチンに入っていった。犬塚は気まずく感じて、今日は涼の手伝いをする気になれず、キッチンを通りすぎた。 そのまま廊下を歩いて、なんとなく書斎に入った。 ソファに座り、ぐるりと部屋を見回す。別に本など読む気はないが。 一冊だけ机の上に置かれていた本が目に入った。犬塚は立ち上がり本を手にして開いてみた。 「……」 古い本だ。パラパラめくると一枚の写真が挟まっていた。美しい顔をした女性で竜蛇に似ていた。 ───この女は誰だ? 写真も古くて少し色褪せていたが、女の瞳は琥珀色をしていた。 犬塚はしばらく写真を見ていたが、再び本に挟んで閉じた。本を机の上に置いて、ソファに座ってぼんやりと過ごした。 ご飯ができたと涼に呼ばれて、犬塚は涼と遅めの昼食を食べた。 竜蛇は今日は早めに戻るらしく、涼は夕食を作って「ふたりで食べたら?」と、夕方には帰っていった。 書斎から出てきた犬塚の様子が少し違うのを察したのだ。勘が鋭いのも困りものだ。 竜蛇とふたりで何を話せというのだ。あの写真の女は誰だ? などと、犬塚に聞ける訳がない。 犬塚はその日、悶々として過ごした。 夜の8時頃に竜蛇が帰って来た。 「ただいま。犬塚」 竜蛇は微笑を浮かべて、犬塚を抱き寄せて軽くキスをした。 「涼は?」 「帰った」 「そうか。では遠慮なく」 そう宣言して、犬塚の腰を更に抱き寄せた。口付けを濃厚なものへと変えた。 「ん……ふぅ……」 舌を絡ませて、唾液の音を響かせて、角度を変えて噛みつくように貪る貪欲なキスだ。犬塚の体が僅かに熱くなる。 「……涼がいても、遠慮しないだろうが」 唇を解くと、犬塚がぼやいた。竜蛇はハハッと笑った。 「誰がいても遠慮はしない。愛してるよ。犬塚」 ちゅ、と可愛らしい音を立てて竜蛇は犬塚の頬にキスをした。

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