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トレーニングルーム3
ふたりで夕食を済ませた後、犬塚をリビングのソファに座らせて、竜蛇が片付けをした。
意外にも竜蛇は世話焼きだと犬塚は思った。
竜蛇はコーヒーを淹れて、ローテーブルにカップを置きソファに座った。
「おいで」
「よせ」
「いい子だから」
竜蛇は嫌がる犬塚を抱き寄せる。肘掛けにもたれてソファに脚を伸ばして座った竜蛇の腿の上に座らされた。
「……鬱陶しい」
「つれないことを言うな」
うなじにキスをされて、犬塚は僅かに震えた。
「カップを取ってくれ」
犬塚は不機嫌な顔のまま、カップを取って竜蛇に渡した。自分もコーヒーを啜った。
……美味い。犬塚は、ほっと息を吐いた。
同じエスプレッソ・マシンなのに、竜蛇が淹れたほうがなぜか美味しく感じた。
竜蛇はそれ以上からかうような事は言わず、黙ってコーヒーを飲んでいた。
静かな時間が流れていく。
竜蛇は不思議な男だ。いつだって犬塚をからかった物言いをしたり、セックスの最中も言葉で責めるのに……時折、静かで穏やかな空気を醸し出す。
犬塚はそれが嫌いではなかった。
コーヒーを飲み終えて、二人は一緒にバスルームに向かった。
竜蛇の手で足枷を外され、ガウンを脱がされる。犬塚は竜蛇のシャツを脱がせた。
軽くシャワーを浴びて体を洗ったあと、竜蛇と湯船に浸かる。
広い浴槽に、竜蛇に背後から抱かれるようにして浸かった。
「なにか俺に隠しているな」
「別に」
竜蛇も勘が鋭い。ますます気まずく感じて、犬塚は湯船から出ようとした。
「待て」
竜蛇は犬塚を抱きしめて引き止める。その手が意味深に犬塚の肌の上を這った。
「……っ」
「お前はセックスをしている時が一番素直だからな」
「うるさい……っ」
「いいぞ。本音を隠し通せ。思う存分、お前を貪ってやる」
「なにを……あ」
竜蛇が犬塚の肩を甘噛みした。思わずビクリとしたら、顎を掴まれて、背後から口付けられる。
「ん……んん」
こんな風にセックスが始まるのは珍しかった。いつも強引に責められてばかりだが、今夜は甘い空気を纏ったまま、竜蛇は犬塚を抱こうとしている。
犬塚は戸惑うが、抗えず竜蛇のキスに溺れていった。
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