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友人2

その夜、いつものバーで竜蛇は志狼を待っていた。 「よお」 少し遅れて志狼が個室に入って来た。この級友はいつでも遅刻して来るのだ。 「やぁ、志狼」 「急にどうした。珍しいじゃねぇか」 「なんとなく、お前と飲みたくてね」 志狼はエキゾチックな青い瞳で面白そうに竜蛇を見た。 「飼い犬にまた噛み付かれでもしたか」 「逆だよ。だいぶ懐いてきて、可愛くて困っている」 「なんだ。つまんねぇな」 志狼は酒を飲みながら、つまらなそうに言った。 「お前の方はどうなんだ。タマちゃんは元気?」 「ああ。タマの家族が見つかった」 「そうか。良かったね」 志狼の恋人てある鉄平の家族は、夜逃げしていて行方不明だったのだ。探してやろうか? と、竜蛇は志狼に言っていたが、志狼は断っていた。 級友といえど、ヤクザだ。鉄平の家族に関することで、ヤクザの手を使いたくは無かった。 「今、うちにいる」 「へぇ」 「全部で10人だ。みんなちっこくて、チワワみたいだぞ」 志狼は笑っているが、竜蛇は驚いて目を見開いた。 「お前の家に住まわせているのか?」 「ああ。知り合いの不動産屋を紹介して、いい家が見つかるまではうちにいる」 あの祖父の家に……。 最初、鉄平と一緒に暮らしはじめたと聞いたときも驚いた。志狼はあの家に人を上げるのを好まない。 竜蛇ですら、祖父が亡くなってからは数えるほどしかあの家に入っていないのだ。 それを10人も面倒見ているというから、正直驚いた。 「お前があの家に他人を住まわせるとはね」 「他人じゃない。タマの家族だ」 「そうだね。で、どんな感じなんだ?」 志狼は目尻に皺を寄せて笑った。 「賑やかだな。一番下が双子なんだが、ヤンチャでな。山に登るみたいに俺に登るんだよ」 「大物になりそうな子だね」 「ああ。長男は真面目だな。俺とタマの関係に戸惑っているみたいだ」 「お前、言ったのか?」 「隠すようなことじゃない。タマとはずっと一緒に暮らすしな。すぐじゃなくてもいい。ゆっくり認めてもらえればいいんだ」 志狼はあっさりと話しているが、鉄平を生涯のパートナーだと言っているのだ。 今までの志狼なら考えられなかった。 家族に鉄平と付き合っているのだと言い、認めてもらえるまで待つと言う。 これまでの志狼なら、そんな面倒くさいことはしないだろう。家族の前で適当に嘘を吐くか、反対をされてもお構いなしに無視しただろう。 面倒くさい事でも、家族の事も、鉄平の事ならば何でも受け入れるのだろう。志狼に迷いは無い。 鉄平と生きていくと決めているのだ。 「……お前はイイ男だよ」 竜蛇がしみじみと呟いた。 「なんだ。今頃気付いたのか」 志狼が片眉をくいと上げて言った。 「俺はお前が好きだよ。志狼」 竜蛇の言葉に志狼が口に含んだ酒を噴出した。ゲホゲホと咽ながら竜蛇に苦情を言う。 「気色悪い事をぬかすんじゃねぇ!」 「ごめん、ごめん」 竜蛇は笑いながら謝った。

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