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外の世界5

犬塚はマンションの外に出て唖然と立っていた。 まさかこんなに簡単に外に出られるとは思っていなかったのだ。 頬に冷たい空気を感じる。寒いはずだ。もう12月になる。 犬塚は黒のスウェットにグレーの長袖Tシャツという季節外れの格好をしている。部屋の中は空調が調整されていて寒くはなかったが、外に出てみると冷たい風が肌を刺した。 このマンションには意識が無いうちに連れて来られた。 少し探索してみようと、犬塚は歩き出した。 最初の監禁部屋は雑居ビルなどが多い場所にあったが、ここは綺麗なマンションが多い。人通りも少なかった。それなりに高級そうな住宅とマンションが並んでいる。 もう少し歩くと飲食店やバーなどの店があった。今は閉まっているが。 チャコールグレーのマンションの前に公園があった。行くあても無いので犬塚は公園に入ってみた。 なんとなくベンチに座り、ぼんやりとしていた。尾行している者はいないようだ。 犬塚が監禁部屋から逃げ出した時も、数日放置されていた。今回もだろうか? ─────違う。 あの時と違って犬塚に逃げる気は無い。それは竜蛇も分かっているだろう。 勝手に部屋を出た事を怒るだろうか? いや……怒らないだろう。 連れ戻された時に倉庫で拷問されたが、逃げた事を怒っていたのではない。 あの時、竜蛇は犬塚が自分以外の男に気を許した事に怒ったのだ。 今なら分かるが、あれは嫉妬だ。 感情を剥き出しにした竜蛇を思い出して、犬塚はゾクリとした。 執着、嫉妬、独占欲。 ただただ犬塚にだけ注がれる竜蛇の情愛に、犬塚は安堵する。 こんなにも誰かに必要とされた事など無かったから。 竜蛇の愛し方は歪んでいる。 だが犬塚自身も歪んだ人間だ。竜蛇が言うように、二人は合うのかもしれない。 しばらくベンチに座っていると、体が冷えてきてぶるりと震えた。そろそろ戻ろうと思い、犬塚は立ち上がった。 すっかり冷えてしまった。両手で腕を擦りながら歩いて来た道を戻ると、 「あ……」 竜蛇のマンションの前に見知った人影を見つけて犬塚は立ち止まった。

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