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人並み4

  「お店はあたしが選んでもいい?」 「任せる」 涼は少し奥まった道に入り、小さなインド料理の店の前まで来た。 「カレーでいい?」 「ああ」 ふたりは店に入った。少し早い時間だからか客は少ない。奥の席に座り、涼はすぐにメニューを開いた。 「インド料理って自分じゃ上手く作れないのよね。やっぱりお店で食べる方が本場の味っていうか、窯で焼いた熱々もちもちのナンとか家じゃ食べれないし。あたしはこれにするわ」 涼はほうれん草カレーとバターチキンカレーのタンドールセットを選んだ。犬塚はキーマカレーのセットにした。 「なんかいいね。こうして犬塚さんとお出かけするのも」 「……そうだな」 犬塚に友人と呼べる人間はいない。唯一、近しい人間はブランカだけだ。 ブランカの元にいた殺し屋の子供達とは互いに気を許せない関係だった。 依頼人と会う以外では、犬塚はいつもひとりで過ごしていた。こんな風に普通の人のように出かけたり、食事をしたことなど無かった。 竜蛇だけだ。あんなにも長い時間を共に過ごしたのは。 そして涼も。涼は不思議な女だ。犬塚を特別扱いはしていない。竜蛇に媚びもしない。兄の話や売春をしていた話、薬物治療の病院にいた話も聞いた。 だが、普段の涼からはそんな過去や兄への歪んだ愛情など微塵も感じられない。 良い意味で感情がフラットなのだ。だからかもしれない。まともな人付き合いなぞせずに生きてきた犬塚が自然と涼と過ごす事に慣れたのは。 「あ」 「なんだ?」 「……あー。なんでもない。お腹空いたの」 犬塚の唇が僅かに緩み、笑みを浮かべていたのだ。 犬塚はいつでも不愛想な顔をしているか、表情の無いような顔をしている。だが、今は口元を緩めリラックスした表情をしていた。 涼はそれに気付いたが、言えば犬塚は拗ねて仏頂面になってしまうので黙っている事にした。 ────組長の前でも微笑んであげるといいのに。可愛い~って転げまわって身悶えそう。 犬塚はすっきりと整った顔立ちをしている。薄く微笑むと少し幼く見えて可愛らしかった。 ふたりはカレーを食べた後、夕飯の食材を買ってから竜蛇のマンションに帰った。

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