竜蛇の唇が弧を描く。この男には犬塚の心情はお見通しだった。 「………あ！」 竜蛇は一度ペニスを引き抜き、犬塚をテーブルの上に伏せさせた。尻の肉を手で左右に開き、ヒクつくアナルにペニスを擦り付けた。 「……ああ、志信……はや、く」 催促するように犬塚の腰が揺れた。 「可愛い。幸人」 「あっ！………あぁあ─────ッッ！！」 犬塚の望み通り、竜蛇はバックで激しく突きまくった。パンッパンッと尻肉を打つ生々しいセックスの音に犬塚は乱れまくった。 「ああ！ イイッ！………ぅあ！ あ、あ、ああッ！」 「素直でいやらしいお前も最高だ……ッ」 竜蛇は焦らす真似はせず、互いに絶頂を目指すように犬塚のアナルを責めた。 「ああ！」 竜蛇は手を前に回して、犬塚の先走りで濡れたペニスをしごいた。前に与えられる快楽に犬塚の後孔がきゅうと締まり、竜蛇を追い詰めてゆく。 「………幸人。一緒に………ッ」 「ああ、志信………し、のぶ………あ！あ！……も、イキそ………ッッ！─────あぁあッ！」 犬塚が絶頂に達した瞬間のキツい後ろの締め付けで、竜蛇も絶頂に達した。熱い飛沫を犬塚のアナルの肉壁にぶちまけた。 「………あっ！ あっはぁあ……ぁ……はぁ……はぁッ」 犬塚はビクッビクッと小さく痙攣して、絶頂の余韻にうっとりとした。 竜蛇は犬塚に覆い被さるように抱き締めて、汗ばんだ頸を甘噛みした。 「………愛してる。幸人」 「………」 もう何度も囁かれている竜蛇の甘い告白を、犬塚は目を閉じて静かに受け止めた。 「俺にはお前だけだ。お前でなければ駄目だ。愛している」 「………わかった」 その言葉に竜蛇は沈黙した。 わかった。 犬塚はそう言った。今まで竜蛇がどれほど「愛している」と言っても犬塚は返事をしなかった。 いや、「嘘だ」「うるさい」などとは言われた事はあったが、受け入れるような言葉は貰った事は無かった。 甘さのかけらも無いその一言に、竜蛇の胸は喜びに震えた。 今日、犬塚が外に出たのを放置したのは、僅かにだが賭けでもあった。 首輪がある限り犬塚は完全には竜蛇から逃げる事はできない。それに犬塚が逃げるつもりがないのは分かっている。 だがまだ、竜蛇には犬塚を閉じ込めてしまいたい欲求があった。自分の愛が歪んでいるのは自覚している。 閉じ込めて調教を重ね、肉体的にも精神的にも自分に依存させて、従順な奴隷に変える事もできるだろう。 それでは駄目なのだ。 ただのセックス相手の愛人が欲しいのではない。共に生きる伴侶として犬塚には一緒に居て欲しい。 依存では到底足りないのだ。 自立した強い精神で竜蛇を求めてほしかった。 「………ありがとう。嬉しいよ。幸人」 「………何がだ」 伏せになっていて犬塚の表情は見えない。だが、いつもの仏頂面をしているのだろうと思った。 「服を脱いでシャワーを浴びよう。今度はベッドで抱かせてくれ」 竜蛇は微笑みながら、犬塚の頸にキスをして甘い声音で犬塚を誘った。