137 / 151

誘惑4

本当に単純な子供だ……。香澄は心の中で呟いた。 佑月はつい半年前まで大学生だった。 借金のカタに売られてきたが、泣き暮らすどころか、性に奔放なところがある佑月はポジティブに現状を受け入れた。 路上で客を取るよりマシだと、カラカラと笑っていた。 この娼館の客は金持ちばかりだ。若いうちに借金を返済し、金持ちに見受けされたいと、密かに野心も持っていた。 だが、心の隅では不安や寂しさを持っている。気ままな大学生から男娼に身を堕としたのだ。 不安があって当然だが、それを吐き出せる相手はいなかった。 そこを揺さぶれば簡単だった。 佑月は快楽に弱く、優しい言葉にも弱い。それに若くて馬鹿だ。 そのすべてが香澄にとっては好都合だった。 その日から佑月は香澄とこっそり逢瀬を繰り返すようになった。嫌な客に当たった後は香澄に慰めてもらった。 「大丈夫? かわいそうに……。がんばったね。佑月」と、香澄に優しく撫でられると泣きそうになってしまう。 まだ年若い佑月は甘やかされることに飢えていたのだ。香澄の言葉が全て嘘だなどと見抜けないでいた。 「……香澄」 佑月にねだられて、香澄は優しくキスをした。 「香澄は疲れてない? 眠い?」 触れてほしいくせに、佑月は香澄を気遣うように聞いた。そんな佑月に香澄は優しく微笑む。 「大丈夫。佑月は優しいね。好きだよ」 香澄の言葉に佑月は照れたように笑った。この「恋人ごっこ」に佑月は夢中だ。 香澄は佑月の服の中に手を入れて、小さな乳首を撫でた。 「あっ」 「可愛い声。気持ちいい?」 「……うん。気持ちいいよ」 この夜も佑月の快楽を優先して、香澄は奉仕した。佑月はうっとりと香澄に身を任せた。 ……馬鹿な子。 香澄の心は冷え切っていたが、おくびにも出さなかった。 大切に想われていると錯覚させるように、毒のような甘さで優しく囁き続けたのだった。

ともだちにシェアしよう!