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甘い夜明け2

キスを解いた竜蛇の唇が、顎先から喉を伝い、耳朶を甘噛みした。 「……するのか?」 犬塚の色気のない言葉に竜蛇は苦笑して首筋に顔を埋めた。 「涼が来るまで、たっぷり時間はある」 「そうじゃなくて、いや、涼の前では二度とさせないが。昨夜、さんざんやっただろ……っ」 竜蛇の少し冷えた指が犬塚の脚の付け根を這う。犬塚の耳に唇を触れさせたまま、竜蛇が甘ったるい声で囁いた。 「いつだってお前が欲しいよ」 犬塚は背をゾクゾクさせながら竜蛇から離れて振り返り、その胸を押し返した。竜蛇は意外そうな顔で犬塚を見た。 「今はしない」 はっきり言い切った犬塚に、竜蛇は面白そうに目を細めて聞いた。 「なぜ?」 「昨夜やりまくっただろ。まだケツが痛いんだよ」 しつこく食い下がる竜蛇に苛立ったように犬塚が言い捨てた。この話は終わりだと、犬塚はキッチンを出ようとしたが、再び竜蛇に引き止められた。 「しつこい」 「わかった。挿れない。それならいいだろう?」 「は?」 竜蛇は犬塚を強く抱きしめて、背後から頬に口付けた。 「ほんの少し触れるだけだ。幸人」 竜蛇は小さな囁き声でねだり、スウェットの上から無駄なく鍛えられた犬塚の痩身を撫でた。 犬塚の背に密着して、その黒髪を食んだ。そして、耳の裏に柔らかく口付けて犬塚の匂いを深く吸い込んだ。 「……あんた、少しは俺のいうことも聞けよ」 我を通す竜蛇が気に入らないといった声音だが、犬塚の声は僅かに震えていた。竜蛇の手がスウェットを捲りあげて犬塚の胸を揉むように撫でた。 「いつだって聞いているだろう」 「どこが」 竜蛇は両手で犬塚の胸を揉みしだき、犬塚の足の間を割るように膝を入れた。「はっ」と犬塚の背が反る。 「貪欲なお前にいつだって応えている」 「うるさい……んぅ」 竜蛇は背後から犬塚の顎をとり、キスをした。文句ばかり言っていた犬塚だが、自ら舌を伸ばして竜蛇の舌に絡めた。 竜蛇とのキスは好きだ。鞭打たれることよりも、拘束されることよりも効果的に犬塚を無抵抗にしてしまう。 もっと欲しいと、そう願ってしまう。 ごくり、と犬塚の喉が鳴る。砂漠で飢えた旅人のように、貪欲に竜蛇の舌と唾液を求めた。 「……は」 そのまま犬塚を抱き上げてダイニングテーブルの上に仰向けに乗せた。スウェットを腕まで捲りあげて、軽く両腕を拘束するようにした。 犬塚は両腕を頭上に上げたまま、引き締まった裸体を竜蛇の眼前にさらしている。 「お前の体は綺麗だ。一切の無駄が無い」 竜蛇の指が皮膚の上から犬塚の筋肉をなぞる。犬塚は息を詰めて瞼を閉じた。 「体毛も薄くて、赤ん坊のように肌も綺麗だ。乳首の形も好きだ」 きゅっと犬塚の乳首を摘まれて、犬塚の裸身がぴくんと跳ねる。 「う、うるさい! やるなら黙って、さっさとやればいいだろう!」 「照れる必要はない。俺は事実しか言ってない」 「黙れ! あっ」 竜蛇の悪戯な指が犬塚のペニスに触れた。そこはすでに反応を示しており、ゆるく勃起していた。人差し指と親指で輪を作り、軽く上下に扱いた。 「ペニスも綺麗だし美味そうだ。食べてもいいか?」 「うるさっ、あ!」 竜蛇は舌を伸ばして、根元からべろりと舐めあげた。犬塚は切なげに眉根を寄せて甘やかな吐息を吐いた。 ゆっくりと咥えられてフェラチオされる。熱い男の咥内に鳥肌が立つ。 犬塚は無意識に腰を揺らめかせて、ペニスへの愛撫を更にねだった。 「……いやらしい子だ」 「あ、はぁ……う、うるさい」 「好きだよ」 「ああ……」 竜蛇は指で犬塚の乳首を愛撫しながら、ペニスをしゃぶった。 犬塚は淫らに痩身をくねらせて、息を荒げている。 竜蛇は犬塚の痴態に目を細めた。責め苛んで泣かせることも、優しく愛して鳴かせることも、どちらもたまらないのだ。犬塚の全てが竜蛇を惹きつけてやまない。 抗い続けてほしいと思うし、逆に全てを受け入れてほしいとも思う。 竜蛇にはふたつの欲望がある。 犬塚はその双方を煽るのだ。

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