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自慰2

  竜蛇は遅くなるというので、夕飯も涼とふたりで食べた。 「じゃあ、犬塚さん。また明日ね」 玄関で涼を見送り、する事も無いので寝室のベッドにごろりと寝ころんで天井を見上げる。 今朝、涼に欲求不満顔だと言われた事を思い出して眉根を寄せた。 セックスしたかったわけじゃない。 ただ、竜蛇があっさり引き下がったものだから拍子抜けしたのだ。 竜蛇は犬塚を抱かなかった。いつだって強引なくせに……甘く触れられただけ。 犬塚はそれを物足りなく感じた自分に苛立っていた。これではまるで犬塚の方が竜蛇とセックスしたがっていたみたいだ。 「……」 朝の事を思い出して、体の奥が少し疼いた。いつもは熱くて硬い竜蛇のペニスで気が遠くなるほど貫かれているのに。悔しいが涼の言う通り不完全燃焼だ。 犬塚はそろそろと自分の股間に手を触れさせた。服の上からゆっくりと撫でる。最初は焦らすように触れてくる竜蛇の手を思い浮かべながら。 「は、」 馬鹿な真似は止めろ。そう思うが、犬塚の手の動きは大胆になっていく。 竜蛇は今夜は遅い。それまで待てなかった。 ジッとジッパーを下げてズボンを脱いだ。下半身だけ裸になって勃ち上がったペニスをゆるゆると扱く。 ……足りない。こんなんじゃ…… 犬塚は指を舐めて濡らして、股を開きアナルに触れた。ここを自分で弄るのは初めてだった。そこはすでにひくひくとヒクついて淫らな収縮を繰り返している。 どうして、俺はこんな…… セックスなんか嫌悪していた。 自慰行為もだ。 犬塚は死ぬまで自分はひとりだと思っていた。 誰かと抱き合うなど無理だ。女を抱くのも、男に抱かれるのも耐えられない。そう思っていたのに。 後ろに竜蛇の雄が欲しくてたまらない。ここを熱い肉棒で突き刺され、突き上げられて、男の思うさま揺さぶられたい。 犬塚は指に力を入れて、くぷりとアナルに指を埋めた。熱い肉壁が犬塚の指に絡みつく。 こんなふうになっているのか…… 「ぁ、はぁ……」 竜蛇はいつもここに挿れて、快楽を感じているのか。 『お前は最高だ』 『お前の雌犬の孔は俺を求めている』『熱くて、気持ちがいいよ。幸人』 『……幸人』 蕩けるような竜蛇の声を思い出して、犬塚の体温は更に高くなった。

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