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自慰4

   「ぅ、う……くそっ!」 竜蛇はベッドヘッドにもたれて、脚を伸ばして座った。 その脚を跨ぎ、竜蛇に高く掲げた尻を向けた状態で犬塚は自慰行為を続けていた。 アナルに埋めた指は三本になっていた。竜蛇の顔は見えないが、いつものように微笑を浮かべて美しい琥珀の瞳で見ているのだろうと思うと犬塚の息は荒くなってしまう。 「口が悪いね、犬塚。もっと淫らな言葉でも言ったらどうだ」 「うるさい!」 ……こんなこと、望んでいないのに。 指の動きを止める事ができない。 竜蛇に見られながらの行為は、ひとりでしていた時よりもずっと気持ちが良かった。 息が荒くなり、激しく指を出し入れする。くぽくぽと卑猥な音がしていて、いっそう興奮した。 ……どうして、俺は……こんな……。 ギシリ、と竜蛇が犬塚ににじり寄る。尻に熱い息を感じて、犬塚の腰がビクリとした。 「あっ!」 伸びきったアナルのまわりを竜蛇が舐めたのだ。あまりの気持ちよさに犬塚の眉根が切なげに寄せられた。 竜蛇の熱い舌が犬塚の指やアナルの周囲、尻の狭間を蛇のように這いまわる。 「ぁあ、あああ、志信ッ!」 「気持ちがいいと言ってみろ」 「………」 犬塚はきゅっと唇を噛んだ。自分の方が男に飢えて竜蛇を求めているようで悔しかった。 竜蛇の方が犬塚を乞うて抱いていたのに。いつだってそうだ。 だいたいは竜蛇が犬塚に仕掛けて、夢中にさせ、快楽に蕩けた頃には犬塚も求める言葉を紡いだ。 だが、今はまだ理性が勝っている。 「今朝のように好きだと言ってみろ。俺に舐められると気持ちがいいだろう?」 「ぁ、あ!」 竜蛇の舌が尾骨から背骨を這いあがり、うなじに噛み付いた。 「素直じゃないお前も可愛いが、今夜は淫らに求めて欲しい」 「い、やだッ」 「そうか」 竜蛇は犬塚から離れた。 あっさりと引いた竜蛇に犬塚は少し驚いて竜蛇を見上げた。竜蛇は冷たい琥珀の瞳で犬塚をちらりと見て背を向けた。 「俺はシャワーを浴びて別の部屋で眠るとするよ。そんなにひとりがいいなら楽しめばいい。お前の邪魔はしない」 そう告げて寝室を出て行こうとした。 「ま、待てッ!!」 犬塚は無意識に大きな声で竜蛇を引き止めた。竜蛇の足が止まる。 「なんだ?」 「……ぃくな」 蚊の鳴くような声で犬塚が言った。 だが竜蛇は犬塚の方を見ない。それがもどかしくて今度は怒鳴るように言った。 「いくな!」 ようやく竜蛇は振り返り犬塚を見た。 「それで?」 「……っ」 さらに続きを促されて、犬塚は僅かに傷ついたような表情で竜蛇を見上げた。 その顔に竜蛇はぞくぞくする。 このまま放置されるなど犬塚には耐えられないだろう。もっと自分を求めさせたかった。 「ここに、戻れよ」 目を伏せて犬塚が小さな声で竜蛇を求めた。竜蛇は静かにベッドに戻り、犬塚に背を向けて腰かけた。 その背中がもっと犬塚にねだる言葉を言えと命じている。犬塚は唇を舐めて言葉にした。

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