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Ⅰ:3

◇ 「はっ、…はっ、さいっあく、」  上代に教えられた受け入れ準備は、精神的にも肉体的にも想像以上にキツく、それを体感する度に思い知らされる。  男のカラダは、そう簡単に男を受け入れたりし無い。だが、弟はどうだったろうか?すんなりと受け入れた気もするし、心なしか体を清めた香りすらした。 「由衣っ、の、クソ野郎…っ、」  アレはきっと仕組まれていたのだ。多分、強姦未遂のあそこから既に。つまり由衣は、初めから俺を狙っていたわけだ。実の兄である俺を…。  そう考えただけでとてつもない吐き気が込み上げた。 「次男くん大丈夫? 顔真っ青だけど」  漸く浴室から戻って来た俺を見て上代が笑う。 「本当にキツイのはここからだよ。何たって次男くん、ノンケなんだからさ」 「……分かってる」  上代が居るベッドへ乗り込むと、シーツの下でバリバリと乾いた音が立った。触り心地も何だかゴワついている。 「…?」 「ああ、下にビニールシートが敷いてあんの。だから安心して汚して良いよ。合意とは言え、精神的に来ると吐いちゃう場合もあるワケ」  何となくベッドの周辺を見回すと、それ用だと思われるビニール袋を着けたバケツが用意されていた。あと、ウエットティッシュやミネラルウォーターも。 「お前がモテる理由、何か分かった気がする」  俺が溜め息混じりに呟けば、やっぱり上代は緩く笑った。 「あっ、はっ、ぃ…あっ、ぅ」 「ん、そろそろ良いかも」  うつ伏せにさせた俺の後ろを、ジェルローションを使ってじっくりと指で解す上代。その指使いは非常に丁寧で、そして理知的だ。  孔を解すに至るまでの前戯も巧みで、そのお陰なのかどうなのか、俺は未だ嘔吐する事なく触れられる部分から快楽を拾い始めていた。 「時間かかってごめんね、俺の意外とデカイらしくてさ」  自慢にも聞こえそうなセリフなのに、その声が余りにも申し訳なさそうで俺は思わず笑ってしまう。 「笑ったらダメだって、力入るから」 「だっ…て、ふぁっ!あっ、」  つぷん、と抜き取られた指の束。  何も無くなったそこがヒクヒクと物欲しそうにヒクつくのが自分でも分かり、そんな自分に漸く吐き気が込み上げた。 「大丈夫、大丈夫。コレだけ尻弄れば感じるのは当たり前だから」  俺の様子に目ざとく気付いた上代は、汗の滲む髪を後ろから優しく混ぜた。かと思った瞬間、孔の入り口に熱いものが当てがわれる。 「力抜いてね…」 「ふっ!」 「こら、逆だって。それじゃ入らないよ」  そうは言われても力はどんどん入ってしまい、どうやって緩めるのかすらパニックでわからない。俺はベッドシーツにひたすらしがみ付いた。 「ん~、仕方ないな。慣れるまでは後ろからのが挿れ易いんだけど」  上代はそう言うと俺の両手をシーツからベリっと剥がし、うつ伏せだった体を仰向けにひっくり返した。 「っ、んぅ…」  美麗な男の目元が紅く色付いていたのが目に入った途端、俺は唇を優しく奪われた。  同性に奪われている違和感と嫌悪感が無いと言えば嘘になるが、由衣に奪われた時よりも断然平気だった。  手練れているからなのか気持ち良くさえある。  そう油断したその時、唇を解放されて力が抜けた隙を突いて上代が膝を掬い上げ、剛直の先っぽを中へと侵入させた。 「うぁあっ!? あっ、ぃ"っ」 「大丈夫、ゆっくり挿れるから力抜いて」  上代はゆっくりと腰を揺らし、進んでは少し戻り、また進んでは戻りを繰り返し入って来た。痛みよりも圧迫感が凄くて口をハクハクとさせていれば、目からは生理的な涙が溢れた。 「イカれてるとは思うけど、入れ込む気持ちが分からんでもない…かな」 「な……にっ、?」  俺の上で上代がふっと笑う。 「可愛い、って言ったんだよ」 「はっ、? あっ、あぁあ…うあっ、」  残りをズブっと押し込んだ上代が、一旦深く息を吐く。  俺たちの両手は、何時の間にかシーツの上で恋人繋ぎで絡んでいた。でも、それが妙に安心を生む。 「はっ……馴染んできた。動くよ」 「ん……あっ、あっ! ぁあっ、や、上代! ひぁああっ! あっ、」  先ほどまでがどれだけ手加減されていたのか思い知らされる、強く、激しい蹂躙。 「ンぁっ! ぁうっ、うっ…ん"っ」 「ん、いいねっ…ウネってる。気持ち良いんだね」 「かみっしろ! 上代っ! あっ!」 「可愛いよ、次男く…じゃないな」  “紫穂”  呼ばれた瞬間、恥ずかしい程中がウネり上代を締め付けたことが、自分でも分かった。

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