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Ⅰ:終

 隣で死んだように眠るのは、探せば何処にでも居そうな平凡な少年。  彼には三人の兄弟が居て、どれも恐ろしい程の美貌を持っていて、全員が非常識の塊のような奴らだった。  そんな兄弟を本気で嫌う少年に、上代は少なからず共感を覚えていた。  この男子校の特色に染まらず嫌悪を丸出しにする所もまた好感を覚えた一つである。  まぁ、興味な有って無い様な、そんな程度のものではあったが。  上代は少年の無防備に曝け出された素肌に散る紅い痕に指を滑らせた。  興味など有って無い様なものだった。そう、今日彼を抱くその時までは。 『初めてを弟に捧げるくらいなら、見ず知らずの野郎に強姦された方がまだマシだ』  そう言って上代に抱かれた少年もまた、マトモとは言い難い。だが、自身を犠牲にしてまで兄弟から向けられる異常な欲から逃げようとするそれは、ある意味ではマトモなのかもしれなかった。 「危ないのは四男だけじゃないって、いつ気付くかな?」  一番わかり易い四男にですら、襲われて漸く気付いたくらいなのだ。長男や三男が向けている欲になど、少年は全く気付いて居ないだろう。  そして、その長男や三男の方が危ないと言うことも。  そんな危ない兄弟が後ろに控えている彼を抱いてしまった上代は、もう無関係では居られない所へ立っていた。  それでも、後悔は感じていない。 「キミの世界がどうなるか、この先が楽しみだ」  汗で張り付いた少年の前髪を掻き上げると、上代はそっと額にキスを落とした。  また一つ厄介な星が回り始めてしまったことを、少年は未だ、知らない。 第一章:END

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