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Ⅱ:終

 鍵の掛けられた準備室のドアが、密かにコンコンと鳴らされた。シャツの下で俺の胸元を弄んでいた諒の手がピタリと止まる。返事はせずジッとドアを見ていると、もう一度コンコンと小さな音がした。  諒がチッと舌を鳴らしシャツの中から手を引き抜く。  俺は瞬時に身なりを整え、ドアに向かって行く諒を見ながら呼吸を落ち着けた。 「はい」 「あ、あのっ」  面倒臭そうにドアを開けた諒の前には、由衣と似たタイプの少年が頬をバラ色に紅潮させて立っていた。 「……何だ」 「え、あの」  少年はチラリとドアの隙間から諒の後ろを伺った。そうして準備室の中の俺と目が合うと、先ほどよりもじもじと身体をくねらせる。諒が何か言おうと口を開きかけたその時、俺は走る様にして二人の間をすり抜けて部屋から出た。  背中に刺すような視線が送られていたが、俺は気付かない振りをしてとにかく走った。  息を上げて教室に辿り着けば、窓側の一番後ろの席で上代がひらりと手を振って見せる。それを見た途端一気に力が抜け、俺は自分の席に倒れ込むようにして座った。 先ほど舐められた首筋が焼ける様に熱い…。  諒が教室にやって来たのは、それから5分程してからの事だった。  ◆ 「で、何の用だ?」 「ぼ、僕…先生に呼ばれたって聞いて」 「……誰がそう言った?」 「え、えっと…同じクラスの山口君に…でも山口君は隣のクラスの池戸くんから聞いて、池戸くんは…」 「もう良い」  諒は目の前の少年を押し退けると、苛立った様子で準備室を出た。 「せっ、先生!」  どれ程可愛らしい少年が物欲しげに見つめ呼び止めたとしても、諒にとっては何の効果も無いし興味も無い。今、諒の関心を引いているのはただ一つ。 「どこのどいつだ」  兄弟の仕業ではないと勘で分かった。  あの二人の弟なら、自ら邪魔をしにやって来るはずだから。  この日を境に、諒は和穂との慣れ合いをピタリと止めた。 第二章:END

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