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Ⅳ:1

※Ⅲのラスト、上代side  部屋に戻った上代が直ぐに感じたのは、男にとっては憶えのあり過ぎる独特な匂いだった。 (ああ、ヤられたな)  同室者の身に起きたであろう事実を単純に予測すると、上代は変わらぬ足取りで共有フロアまで進んだ。 「あれぇ…はっやいなぁ」  テーブルの上には、見せしめのように置かれたネームプレート……だったもの。そこから顔を横に向け、同室者…二階堂紫穂の部屋を見れば、ピクリとも動かない素足が見えた。  相手が誰かまでは判別できないが、兄弟の誰かの仕業に違いない。きっと確信までは行かずとも、紫穂を抱いた相手として上代が容疑者に上がったのだろう。  上代は砕かれたネームプレートを手に取ると、再び大して重くもない足取りで紫穂の部屋の入り口に立った。 「これはまた…」  目に映った光景は上代の予想を上回っていた。  背中で拘束された腕は、抵抗のしようがない程頑丈に固められている。しかし、それでも尚強く掴まれたのか、肩や二の腕には手跡が幾つも痣になって付いていた。  日に焼けていない首筋は歯型がくっきりと浮かぶ程に血が滲み、後処理などされていない下半身はもっと酷い。  気を失い力の込められぬ尻の間からは、白濁した物がドロドロと溢れていた。それは下半身だけにとどまらず、肌にはソレと思わしきものが其処彼処に塗りたくられている。当然、部屋中にその匂いが充満していた。  これも全て、容疑者となった同室者に向けて誇示したものだと上代は受け取る。紫穂を“こう”した奴は、コレは自分のモノだと、そう示したかったのだろう。上代は無意識に口角を上げ、手の中のプラスチックを握りしめた。  手の中が、乾いた音を立てる。  そんな微かな音に目を覚ました紫穂が、上代の姿を捉えるなり必死で体を隠そうとする。だがそれも無理だと理解すると、今度は酷く申し訳なさそうに眉を下げて懇願した。 「ごめん、腕…外して」 上代は握りしめていたモノを手放した。 「やっぱ、キミの兄弟狂ってんね」  少年は自身の状況を理解しているが……でも、理解していない。  今の自分がどれだけ加護欲を掻き立たせるか、そしてそれ以上に、どれ程の加虐心を擽っているのか。  少年は理解している反面で、全く理解出来ていなかった。

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