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Ⅶ:3

「僕とのことは“遊び”だと言いたいの」 「いや……だって、上代とアンタの関係って有名だし」  水城の名前は興味が無くて覚えていなかったが、水城の存在は有名だ。  風紀や生徒会に所属はしていないが、容姿が整い非常によくモテる男、上代律希。上代はこの学園内に沢山の遊び相手が居て、いつも誰かしらを連れて歩く様なチャラい男だった。  マナーとしてなのか何なのか、俺が居る時に部屋に連れ込んだりはしなかったが、それでも校内のそこかしこで男の腰を抱いていれば鈍い俺でもその存在を認識する。だからこそ俺は、人道外れた道を進む為の相手に上代に選んだ。 【口も割りと固く、遊び慣れていて、余り他人に興味が無さそう】  言い方は悪いが、そんな上代の様な男はもっとも利用しやすいと思ったのだ。そして、そんな沢山いる遊び相手の中でも一番上代の側に居る頻度の高い美人が水城だった。  以前俺が諒に捕まりすれ違った時も、確か上代はこの少年を横に連れていたはずだ。 「お互い、遊びなんだろ?」 「…………」  水城が唇を噛み締めた。 「僕がどれだけ君を憎いと思っているか…きっと、想像もつかないんだろうね」 「え…」 「確かに上代君にとって僕は遊びでしかない、それは十分分かってる。だけど、それは君だって同じじゃないかッ。いいや、君なんて所詮“偽物”なんだ、あの人にとって大事なのは君じゃない、その中に流れてる血なんだから! でも僕は違う!! そんなものが無くても僕はっ「ここで何してる」」  塞がらなくなった水城の口が慌てて止まる。  俺たちが振り返った先には、入口に凭れて立つ諒の姿があった。 「二階堂先生…」 「ここは立ち入り禁止のはずだ」 「……直ぐ、出ます」  水城は一瞬だけ俺に視線を向けたけど、直ぐに目をそらし諒の隣をすり抜ける。けど、その瞬間諒が水城の腕を掴んだ。 「なぁ、水城。本当の“偽物”はどっちなんだろうな?」 「ッ、」  諒は掴んでいた手をパッと外すと、固まってしまった水城を物のように教室の外へと押し出した。足が絡まった水城は床に転がり、怯えた目をして諒を見上げる。 「次、勝手に紫穂に近づいたら殺すからな」  大きく目を見開き、水城は慌てて立ち上がると足を縺れさせながら走り去っていった。

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