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Ⅶ:4

「…兄さん」  諒がドアを閉める。そのまま、何もない埃臭い教室の真ん中に立つ俺へと近づいてくる。俺の足は震え、無意識に後ずさった。 「なぁ紫穂。お前、何で上代を選んだ?」 「え…」 「俺たちから逃れたかったんじゃないのか?」 「なっ…なに…」 「なのに、何で上代? 寧ろ余計に逃げらんなくなるんじゃねぇか?」  トン、と背中が壁に着いた。  いつかのあの日の様に諒の鼻先が俺の鼻につくほど近づいて唇に吐息がかかる。そのまま諒は何も言わず、ゆっくりと俺のシャツのボタンを外し始めた。  ひとつ、またひとつと暴かれていく素肌に、働いていない方の指を滑らせる。 「兄さんっ」  ぴくんと肌を跳ねさせると、諒がふっと笑った。 「随分と敏感になったな。どれだけ仕込まれた?」 「あっ、やっ…」 全てのボタンが完全に外され肌蹴ると、両手を差し込み厭らしい手つきで脇腹を上下に撫でる。 「はっ…あ、ぁ…やめっ、兄さんっ」 「覚えてるか? まだお前がチビのころ、こうして風呂場でよく触ってやったろ」 「あ"ぁあっ!!」  少し屈んだ諒は、何のためらいもなく胸元で色付く突起に噛み付いた。 「ぃだぁっ! あ、やめろっ! やだ! あ"っ、あぁあっ」  先の尖った諒の舌が、忘れかけていた過去の記憶を呼び覚まさせる。  遠い夏のあの日から、何度もこの熱い舌で舐め、転がした。それをいつも……和穂が見ていたんだ。 「あっ!! や、にいさっ、あっ」 「あの頃は名前だったろ」 「ひぃあっ!?」  大きな手のひらで、硬くなり始めていた下半身を掴み上げられる。 「“彼氏”にバレたら大変だろ? 痕は付けないでやるから、ちゃんと名前で呼べ、紫穂」 「あっ!! ああっ、なッ、あ」 「紫穂」 「あっ、諒くっ…諒くん!! やめぇッ、あぁあっあ、」  俺のベルトを外しスラックスに手を突っ込んだ諒は、その中で窮屈にしているペニスをひと撫でし蜜を指に絡めると、更に奥まった場所まで手を差し込んだ。 「嫌だ! ダメっ、だめぇえ!! ぁあ"ッ、諒くんっ!!」 「後ろだけでイケたら止めてやるよ」 「ひんッ!! そんな! あっ、嫌だぁあ!!」  上代に何度も慣らされ、和穂にまで犯されたそこは既に飲み込む喜びを知っている。

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