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Ⅶ:5

「ははっ、自分から飲み込んでく」  諒が嘲る様に、俺の中は差し込まれた指を奥まで誘導しようと蠢いていた。それが自分でも分かって、どうしようもない仄暗さに包まれる。絶望を目の前にした俺は、諒の口付けを避けられなかった。 「ンッ、んん…はっ、ん…」  どれ程の人間を相手にしてきたのだろうか。諒の口付けはあの遊び人の上代よりも巧みで、俺の頭の中は翻弄され支配されていた。  もう、どうにでもなれば良いと…そう思ってしまうほどに。    激しく抽迭を繰り返す指が卑猥な音を立て耳まで犯す。  堪らない、お願い欲しい、もっと奥まで  もっと、激しく… 「ああっ、諒くん! りょっ…くん! イキたい! あッ、イキたいぃ! ァあぁあ!!」 「お前からキスしろ。そしたらイかせてやる」  俺はきっと、どうかしていた。 「あむ! ンっ…ふっんん」  諒の顔を固定し…目の前で口角を上げるそれに、必死でかぶりついた。  飲み下せない唾液が顎を伝落ちて浮き出た鎖骨に溜まる。それを諒が舐めとりながら、指を一層奥深く差し込み膨らみを激しく擦り上げた。 「ひぁあぁあ"ア"あぁあ"あッッ!!!」  まるで叫び声だった。  足に力は入っておらず、いつの間にか諒に抱きつき支えられながら、下着も付けたままビクビクと絶頂を迎えた。前は触られていない、後ろだけでイったのだ。それも…諒の指で。  日に日に貪欲になって行く俺のカラダ。指じゃ足りない、別の物が欲しいとまだ疼いている…。  どうしてこんな体になってしまったんだろう。俺はただ、この人たちから…兄弟から……逃げたかっただけなのに…。  体は力を失い、俺はズルズルと床に座り込んだ。溢れ落ちた涙は諒の唇に吸い込まれる。そのまま口付けられ、俺の口の中に塩っぱさが広がった。 「やっぱり双子だな」  目の前にしゃがんだ諒を見上げると、その瞳に酷く残酷な色を携えていた。  本能が、“危険だ”と…“聞いてはいけない”と叫ぶ。けど、間に合わなかった。 「肌の質も、形も、色も。…和穂とよく似てる」  ――――上代が喜ぶわけだ

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