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Ⅸ:3
◇
「どういう事…?」
入口に立つ二人を見た紫穂の背に嫌な汗が流れる。そんな紫穂の状態を分かってか、諒はやはりうっすらと笑みを浮かべていた。
「さっき言ったろ、俺が呼んだんだ」
「だから何でっ!!」
「共同戦線を組んだからだよ、紫穂ちゃん」
声に振り向けば、無表情な由衣が和穂よりも一歩前に出た。
「ほら、僕らの邪魔をする面倒な奴が現れたでしょ? こいつらだって大嫌いだけど、それ以上に僕はアイツが許せない。消してしまいたい。だから考え方を変えたんだ、取り敢えず排除するは他人、兄弟同士の問題は後回し…ってね」
由衣がゆらりとこちらに近づいてくる。
「殺し合っちゃいたいくらい仲の悪い僕らが手を組むって事がどういう事か、紫穂ちゃんにも分かるよね?」
暗闇の中で不気味に浮かぶ由衣の笑みに、紫穂の足は思わず後ずさった。その体を後ろに居た諒にもう一度捕えられ、先ほど受けた快楽を思い出し体が震える。
「紫穂、よく考えろ」
「りょ…くん」
「今まで周りの奴らは、お前に何をしてきた? 何を言ってきた? 上代はそいつらと何か違ったか?」
見上げた先にある諒の瞳に、いつものふざけた色は少しも無かった。ただそこには、暗く深い闇があった。
「俺はずっと待ってた。本当はぐちゃぐちゃにブチ犯して狂わせて、俺から離れられなくしてやりたいのを我慢して、お前から堕ちてくるのを待ってたんだ…ずっとな」
「ッ、」
「お前をお前として愛せる人間が俺たち兄弟以外に居ないんだって、一体いつ気付くんだ?」
諒は言葉の強さとは真逆の手つきで紫穂の頬を撫でた。その瞬間胸の奥の方がぎゅっと縮んで、酷く切ない感情が紫穂を襲う。諒はその後何を言うでもなく、ただそっと紫穂の頬を撫でていた。
「俺は……」
背を流れる汗の量が増える。今考えていることを口にすれば、これから兄弟たちに何をされるか分からない。
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