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「寧ろ、何で冗談だと思うのか教えてくんない?」 「はっ! やっぱりアンタは大バカ者だよ! 僕らが知らないとでも思ってんの!? 上代っ、アンタの目的は和穂兄だろ! ずっと紫穂ちゃんを和穂兄の代わりにしてたんだろ!? このクソ野郎っ!!」 「何だ、チャラ男くんってばそんなに僕が好きなの?」 「………」 「そんなに僕が好きなら抱いてあげようか? それとも、抱いてみる?」  シーちゃんから離れるなら、どっちでも受け入れてあげるよ、なんて。そんな事を笑って言う和穂に、紫穂は全身に鳥肌を立たせた。それと同時に再び心に虚しさが広がる。  由衣や和穂が言う様に、矢張り上代は紫穂を和穂の身代わりに使っていたのだろうか。和穂の体に良く似た色と形、大きさ。上代が何度も紫穂を求めたのは、そんな和穂を連想させる紫穂の“カラダ”に興奮したからなのだろうか。  予測だけでしかなかったそれが今、紫穂の中で確信へと変わり始めていた。だが… 「ふっ…くく、」  上代が堪えきれないと言った様子で声を漏らした。その瞬間、楽しげに上代を追い詰めていたはずの和穂の顔が怪訝なものに変わる。 「…なぁに?」 「確かに俺は三男くんを意識してるよ。でもそれは、どれだけ頑張っても越えられない壁って言うか、障害物って言うか…俺にとって三男くんはそう言うものなんだよね」  そこまで言ったとき、矢張り声を上げたのは由衣だった。 「嘘だ!! だってアンタは水城さんを和穂兄の代わりにしてるじゃないか! みんなそう言ってるんだから!!」 「確かに…水城と関係を持ったのは三男くんに似てたからだ。実際水城にもそれを理由に誘われたしね。けどさ、水城を抱いたら直ぐに気付いちゃったんだよね。俺は三男くんの悔しがる顔を見たかっただけで、恋愛対象としては見てないんだって。ずっとずっと、憎らしい存在でしかなかったんだってね」 「嘘だ嘘だ嘘だッ!! だったらなんで今でも水城さんと!!」  取り乱した由衣に上代は苦笑する。 「最低な話だけど、俺って貞操観念低いからさ。水城とはまぁ…単なるセフレであって、それ以上でもそれ以下でもない。正直何の感情もないんだよ」  皆が上代の言葉に驚き唖然とした。それは勿論、紫穂も同じだった。

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