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「…は? 何言ってんだよアンタ。だったら、何で紫穂ちゃんを…」 「ねぇ、次男くん。どうして俺たちが“恋人”なんてものになったか、覚えてる?」  まるでレーザービームの様な強い眼差しで上代は紫穂を突き刺す。 「『今すぐ抱いてくれ』って、『兄弟なんかにヤられる前に他人に奪われておきたい』って、そう言って俺に隙を見せたのは君だよ、次男くん」 「上代…」 「俺は初めから次男くんを三男くんと重ねちゃいなかった。まぁ、二階堂兄弟は色んな意味で有名だから知ってはいたけど、同室でクラスメートってくらいしか接点が無くて、大して話したこともなかったし。だから正直次男くんの誘いには驚いたよ。何で俺を選んだのかな? ってさ。まぁでも最近退屈だったし、真面だと思ってた次男君がそう言わなきゃならなくなった現状ってやつにも興味を引かれてさ、それで誘いに乗ったんだ。それが俺たちの始まりだよ」  そして請われるままに紫穂を抱いた。だがそれは、思ってもみない方向へと上代を導いた。 「単なる興味本位だった。二階堂兄弟がどんな反応するかも見てみたかったしね。だけどさ、多分俺は…次男くんに触れた一発目からもう、完全にやられてたんだ」  血の繋がった兄弟たちから向けられる、異常な愛情から逃げようとする紫穂。そうして普通とは言い難い道を選び、上代と言う同性に体を明け渡し泣きそうになりながらも快楽に溺れていくその姿は…。 「どうしようもないくらい心が揺さぶられたよ。背も高いし、目付きだって良い方じゃない、見た目は完全に普通の高校男子なのにさ。何も出来ない子供みたいな目をして、そのクセ酷く甘くてやらしい声出すんだもっ…!?」  上代が言い切る前に“ガンッ”と何かが棚にぶつかる音が部屋中に響いた。間一髪と言った形でそれを避けた上代。その上代の顔の横では和穂の足が鉄の棚をへこませていた。 「あっぶねぇ…これ、殺す気だった?」 「……そんな話、聞きたくないんだけど」  全く余裕を無くした和穂は、ただ棚にめり込んだ足を下しながら上代を睨みつけている。だが、そんな和穂に脅えたわけでもないのに、上代は初めてその顔から笑顔を消した。

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