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「おいで、次男くん」 「ッ、」 「一人にしたりしない。諦めさせたりしない。ずっと笑っていられるように、俺が必ず最後まで逃がしてあげるから」  だから、俺の所においで。 「上代…」  紫穂の瞳から、涙が一粒零れ落ちた。  胸の奥が押しつぶされるように痛んだけど、不思議と心地よくも感じる…今までに感じたことのない痛みだった。思わず身じろいで、閉じ込められていたはずの諒の腕の中から飛び出した。でも… 「行かせるわけないでしょう」 「いッ、」  走り出した紫穂の腕は、上代へ辿り着く前に和穂に捕えられていた。 「馬鹿なこと考えないで」 「和穂っ」 「僕らが今まで我慢してきた意味はどうなるの? 僕との約束はどうなるの? 約束破ったらどうなるか、アレだけ教え込んだのにまだ分かんないの? ねぇ、シーちゃん」 「痛ッ、和穂! 痛いッ!!」 「和穂兄やめてっ! 乱暴だけはしないって言ったじゃないか! 紫穂ちゃんを放して! きゃあッ!!」  紫穂に乱暴を働く和穂に耐え切れず由衣が飛び出すが、体格差もあり簡単に由衣は和穂の片腕で弾き飛ばされた。華奢な体が壁にぶつかり嫌な音を立てる。壁に沿ってズルズルと床に倒れこんだ由衣はそのまま動かなくなった。

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