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Ⅹ:6
「由衣っ!」
「何であんなチビ見るの? 駄目じゃない、僕以外を見たら…どうして分からないの? 僕たちは二人で一つなのに、どうして僕以外を選ぼうとするの」
「あ"ぁ"あッ!!!」
掴まれた腕を変な方向へと捻り上げられ紫穂が悲鳴を上げる。
「次男くん!!」
暴走を始めた和穂に上代が飛びかかろうとしたところで、突然和穂の体が紫穂から離れ吹っ飛んだ。
「行け、上代! 早く紫穂を連れてけ!!」
「先生っ?」
「諒くん!?」
和穂が吹っ飛んだのは、諒が脇腹を蹴り込んだからだった。
「良いから早く行けッ!」
「ッ、…行くよ次男くん!!」
ハッとした上代が素早く紫穂の腕を取り走り出す。釣られて紫穂も走り出すが、それでも…と思わず諒を振り返った。
「……行け」
諒は紫穂を見ずに呟く。そんな諒の足元で、和穂がゆっくりと立ち上がろうとしていた。
「りょ…」
「行け!!」
諒の声に背中を押されるようにして、そのまま紫穂は上代とともに部屋を飛び出した。部屋からは何度か鈍い音が聞こえたが、紫穂は今度こそ振り返らなかった。
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