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終章:1

 消毒くさい部屋から外を眺めていた。  今朝から幾度となくこの部屋を行き来する医者や看護師も、昼過ぎになって漸く落ち着いた。  ふっ、と息をつくともう一度紫穂は体をベッドに沈める。  医者の話によれば一週間ほど目を覚まさなかったようで、体はその話の通りに少し重くて怠かった。だがそれは、眠っていたからなのか怪我から来るものなのかイマイチよく分からない。 「…ボロボロだ」  紫穂の上半身は包帯に包まれていた。頭の傷に触れようとすれば、利き手も固定され動かない。そうして手を動かす事を諦めたところで、個室のドアが遠慮がちにノックされた。 「はい」  短く返事をすれば、ドアは直ぐに開いた。 「よっ!」  そう言って左手を上げた上代も、右肩をガチガチにギブスで固定されている。 「その肩…」 「うん、バッキリ行っちゃって。全治二ヶ月だってさ。まぁでも、結構綺麗に折れてたからもう少し早く治るかな? ってちょっと期待してんだけどね」  早く退院したいし。そう言って上代はベッドサイドにある椅子を引き出して腰掛けた。上代が体を傾けた時に見えた、右側の鎖骨辺りの変色した皮膚に目を奪われる。  きっとそれは、傷を負った肩から続くものなのだろう。

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