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終章:2

「またグルグル悩んでんでしょ、次男くん」 「………」 「馬鹿だね、これはキミのせいじゃないよ」  上代は何でもない様に言ったが、そんな言葉を紫穂が鵜呑みにする訳がなかった。 「由衣は脳震盪と背中の打撲、諒くんは右腕と腰を複雑骨折、上代は右肩。それをやったのは……和穂」 「そう、三男くんだ。だから次男くんは」 「違う、俺だ。……俺が、和穂を狂わせた」 「………」 「あの時にお前、言ったよな。『俺たちを狂わせる何かを持ってんだ』って。俺は多分…知ってた。俺が言うこと、やること、態度で兄弟たちがどんどん狂うことを、俺は知ってた」  離れようとすれば執着が強くなって、従順になれば執着ごと抱きしめられる。それを何度も繰り返すことで紫穂は無意識に安心を得ていた。兄弟達が、自分をまだ必要としているんだと。 「諒くんと和穂が仲良くなって、怖いことから解放されたと思った。でも俺は…いつも何処かで寂しく思ってた」 “俺の事が好きなんじゃなかったの?” 「だから当て付けの様に由衣を可愛がった。由衣が可笑しくなり始めたことに…気付きながら」  諒にも和穂にも靡かない紫穂が特別扱いをする事で、由衣はどんどん狂っていった。諒に、和穂に影響された部分もあっただろう。だが、矢張り大部分は紫穂からの影響だったのだと…今の紫穂にはそうとしか思えなかった。 「俺の兄弟は狂ってる。でも、一番狂ってんのは俺なんだ」 「次男くん…」  上代は、決して紫穂を追い詰めるつもりで言ったわけではない。だが間違いなく、兄弟や上代、深く関わった相手を狂わせていく何かを紫穂は持っていると確信していた。  それが何なのか分からないところが、また恐ろしいとも思っていた。

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