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第4話

翌日から恋愛モード全開でくる、というわけではなく、廉はいつも通り理性的に接してきた。少なくとも、生徒会予算委員会での部活折衝で、武道系の部に割り当てられた予算を全くの忖度無しに全力で取り合うほどには、自然な態度だった。 全国大会出場という実績と廉のワンコ系の誠実そうなイケメン面で、生徒会の主に女子役員に強烈にアピールしたおかげか、柔道部はほぼ満額回答を引き出していた。他方、剣道部はというと、奥二重の目や薄い唇が剣士らしくていいと(主には廉に)言われる反面、辻斬りの侍みたいと女子にはクールを通り越して怖がられるなど主将である俺の評判はあまり良くない。無愛想な態度と相まって、折衝にはまるで向いておらず、柔道部に予算の多くを割り振られたしわ寄せをモロにくらった。不甲斐ない主将のせいで来年度も緊縮財政が続くことになりそうだ。 会議が終わり、他の部の部長たちと共に会議室を出た。遅れて出てきた廉が急ぎ足で追いついてきて、こちらを見ると悲しげな顔をした。 「なんだ、どうした?」 「うん…、なんかごめんな。うちが予算をたくさん取ったせいで、剣道部はまた金が足りねえんじゃ?」 実際、今年度も部費は不足気味で、買い替えの時期に来ている竹刀や防具の新品に替えきれなかった分をその場しのぎの修理でだましだまし使ったり、OBのいる大学の合宿に便乗して合宿費用を安く抑えたりと、様々な節約をしている。そんな中で溜まってきたストレスを、廉に愚痴ることで発散させていた。廉は嫌な顔ひとつせず毎回よく聞いてくれたが、来年度もそうなるかと思うと、少々うんざりしてくるのは正直なところだ。 「別に、お前が謝ることじゃねえよ。次の折衝には、うちも部内で一番のイケメンを連れてくるよ」 「俺は慶生が一番イケメンだと思うけど、もっと一般受けするヤツがいるならそれもいいかもな」 聞き様によっては失礼なことを言いながら、廉はホッとしたように笑顔を浮かべた。 小学校の頃から、太めの眉とちょっと垂れ気味でくっきりした二重の黒目がちな目、大きめで高い鼻など、癒し系のハンサムとして男女問わず人気者だった廉の魅力を、その人懐っこい笑顔に改めて見た気がした。好きだと言われたことがなにかしら影響しているのか、廉を見る目が変わってきた気がして動揺してしまった。 「ほら、さっさと部活に行くぞ!」 廉から視線をそらして頭をブンッと振ると、脱兎のごとく駆けだした。 「え?あ、待ってよ、慶生!」 慌てて追いかけてくる廉を、足に力を入れて全力で引き離した。

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